裏切りと言えば、もう一つ、「原発推進の自民党から出るのは、脱原発を願う県民への裏切りだ」という批判への言い訳も必要だ。
そこで、彼が用意した言い訳は、二つ。
まず、「自民党を変えなければ脱原発は実現しない」というものだ。しかし、彼が自民党で脱原発を叫んだとしても全く意味がないだろう。永田町で彼に一目置く政治家など皆無だ。私が良く知る経産省OBの政治家も、泉田氏のことを「ああ、あの人ね」と見下している。自分が自民党を変えるなどと言うのは、選挙のセールストーク。本気で言ったら、「寝言」だと馬鹿にされるだけだ。
もう一つの言い訳は、「米山知事の裏切りを止める」である。泉田氏は、最近、米山知事批判を強めている。彼によれば、米山氏は、再稼働を止めるためのいくつかの歯止めを少しずつ外しているというのだ。そこで、県庁にいろいろ言っても、自分は無役で影響力がない。国会議員になれば、地元選出の国会議員の声を無視するわけにはいかなくなるので、自分が再稼働を止める役割を果たすというようなことを言っている。これもかなり苦しい言い訳だ。そんな批判をするなら、なぜ、知事を辞めたのかという批判がでるだろう。
ちなみに、最も重要なポイント、泉田氏の「再稼働反対は嘘だったのか」という疑問に対する言い訳が気になるかもしれないが、実は、その言い訳は必要なさそうだ。
なぜなら、泉田氏は、今も支持者たちに、「これまでの自分の考えは微動だにしない。現状での再稼働には反対だ」と言い続けているからだ。選挙中もそういう路線で行くのだろう。それなら、言い訳は不要だ。
自民党の政策との整合性が問われるが、実は、当選さえすれば良いというのが自民党の懐の深いところ。河野太郎外相も、大臣になる前までは、いつも原発反対と言う主張を繰り返していたが、党議拘束に反する行動さえしなければ、不問に付されていた。泉田氏が当選すれば、選挙期間中の発言がもんだいになることはないのだ。