国立がん研究センター東病院胃外科長の木下敬弘医師は、次のように話す。
「薬物療法の効果が出てがんが縮小すれば、根治切除ができる割合が増えることが期待されます。また進行がんでは、微細な細胞レベルの転移が全身に広がっていることも少なくないのですが、それらの転移がんを手術前に掃討でき、予後が改善する可能性もありますね。それによって生存率を上げること、さらには治癒をめざすことが、この治療の目的です」
■ダウンステージ後のコンバージョン手術
もう一つの方法であるコンバージョン手術は、ステージⅣで手術不能と診断された患者のがんが、薬物療法によって切除可能となった場合におこなう。
「ステージIVの患者さんの中には、割合は小さいものの、最新の薬物療法が非常によく効く人がいます。がんのステージがIVからIIIやII、場合によってはIになって、切除可能になるんですね。その縮小したがんを切除するのが、コンバージョン手術です」(木下医師)
ステージIVの状態から薬物療法によってダウンステージがかない、コンバージョン手術の対象となる患者は8%程度いるという。
「この治療では長期生存の報告も出てきており、実際に5年以上生存するなど、治ってしまったという患者さんもいます。現在、治療のタイミングやどんな患者さんに適応があるかなど、よりよい結果を導くための臨床研究も複数おこなわれています」(木下医師)
NACやコンバージョン手術などの先進的な治療や、薬物療法の臨床研究・治験などに関する情報は、がんを専門にする病院や大学病院などのホームページで公開されている。受けてみたい治療や研究をおこなっている病院があれば、受診して相談してみるのも一つの方法だ。
ただ、実際に希望する治療が受けられるかどうかは、それまでの治療経過や現在の状態などを含め、薬物療法の専門医や外科医などによって総合的に判断されることになるので、その点には留意が必要である。
(取材・文/梶 葉子)