それ以外にも、南米・ペルーの場合、「五月病? そんな言葉、初めて聞いたよ。多分ペルーの人たちは(新年度に調子が悪くなっても)病気だと思わないと思う」(30代男性、現地在住のペルー人会社員)、南アフリカ共和国では「長期のクリスマス休暇がありますが、休暇明けに不調になるという一般的な認識はありません。経済が悪いため、多くの人が精いっぱい働かなければならず、落ち込んでいる暇がないからかもしれない」(30代女性、現地在住の南ア人教師)という意見があった。

 こうして海外の“五月病 ”事情を眺めていくと、お国柄が見えて興味深い。その背景を、先出の稲田医師はこう解説する。

「ヒトは社会性の生き物ですから、社会のなかで適応できないと苦しみますよね。そして『適応できない悩み』が『社会的、職業的、または他の重要な領域における現在の機能に、臨床的に意味のある障害を引き起こしている』場合、それは病気として扱われます。つまり、病気かどうかは、本人が苦しむかどうか。そして、苦しむかどうかは本人の属する社会次第ということなのです」

 そんな社会と折り合いをつけられず、五月病になってしまったらどうすればいいのか。

「ひとつの方法として、自分が今どのくらい疲れているのか、意識してみることは有効だと思います。疲れを意識して、疲れをとることも仕事のうちと考えれば、休みの日はしっかり休息をとり、一定のパフォーマンスを継続できるのではないでしょうか。自分の疲れ具合を客観視するには、他人と話してみるのが良い方法です」(稲田医師)

(取材・文/dot.編集部・小神野真弘)

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