現役医師で社会疫学の研究者でもある柳澤綾子医師は、年間500本以上の論文を読破。プライベートでは2児の母でもある柳澤先生に、最近注目している子どもの健康・食事に関するトピックスを教えてもらいました。食事がからだやメンタルに与える影響のほか、大人になってからの健康を守る方法などについて、世界中で研究が進められているそうです。

MENU 「陰キャ」のマウスが「陽キャ」に!? 子どもが大好きな「グミ」は手ごわい相手 子どもの将来の健康リスクは、幼いうちの生活習慣で変わる?

「陰キャ」のマウスが「陽キャ」に!?

――子どもの食事や栄養について、最近、柳澤先生が注目している話題を教えてください。

 食物繊維のはたらきが、近年ずいぶん見直されてきました。以前は、炭水化物から糖質を除いた残り部分だと思われていて、便通をよくするくらいしか役割がないとされていました。しかし、実は腸内細菌のえさとして、非常に重要なはたらきをしていることがわかってきたのです。

 2021年に「Nature」誌に掲載されたカリフォルニア工科大学の研究によると、社交的なマウスの腸内細菌を、そうではないマウスに移植したところ、社交性が見られるようになったそうです(※1)。腸は「第2の脳」などとも言われますが、いわゆる“陽キャ”“陰キャ”といった性格面にも影響を与えている可能性があるそうです。

 また2023年には、食物繊維とうつ病や不安神経症の関連性を調べたこれまでの研究を集めて、さまざまな角度から分析した研究結果が発表されました(※2)。そこには、食物繊維の摂取量が5g増えるごとに、うつ病のリスクが5%減少するという興味深い結果が示されています。

 このような流れから、腸内細菌を活発にするために食物繊維をたくさん摂取したほうがよいのではないか、という議論が専門家の間でトレンドになっています。まだ研究の歴史が浅く、わからないところも多いのですが、子どもの食事でも食物繊維を意識的に取ることをおすすめします。

――食物繊維が豊富な食品は、子どもが食べにくいことも多いようです。

 そうですね。白米のご飯や、精製された小麦で作られた白いパンは口当たりがいいので、子どもが好んで食べますよね。でも、食物繊維を積極的に取るという意味では、玄米や全粒粉のパンなど茶色い炭水化物が効率的です。毎日でなくても、時々、ご飯に玄米や雑穀を混ぜたり、ごまを振ったりするだけでも違うと思いますよ。

 おやつも、チョコレートやクッキーではなく焼き芋にするのもいいですね。最近はスーパーでもよく焼き芋を売っていますし、冷凍品も便利です。

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越膳綾子
ライター 越膳綾子
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