子どもたちの健康を守るために、バランスの取れた食事を意識している親御さんも多いでしょう。しかし、現代の生活環境では不足しがちな栄養素があります。年間500本以上の医学論文を読破する公衆衛生学を専門とする麻酔科医の柳澤綾子医師に、特定の栄養素が不足する背景を聞きました。2児の母でもある柳澤先生。上手に食事に取り入れるヒントもうかがいました。

MENU 食べ物が豊かな時代なのに骨はもろくなっている 日焼け止めや日傘…紫外線対策が栄養不足を招く? たんぱく質摂取量は「戦後すぐと同水準」にまで低下

食べ物が豊かな時代なのに骨はもろくなっている

――現代の子どもの食生活で、足りていない栄養素というのはあるのでしょうか?

 実はいくつかあります。まず意識していただきたいのは、ビタミンD不足。東京慈恵会医科大学は昨年、日本人の98%が「ビタミンD不足」に該当する可能性があることを発表しました(※1)。ビタミンDは、骨の成長や新陳代謝に深くかかわっている栄養素です。骨を細胞レベルで見ると、骨を溶かしたり吸収したりする「破骨細胞」が古くなった骨の成分を壊し、骨を作る「骨芽(こつが)細胞」がカルシウムなどを吸着して新しい骨を作っています。ビタミンDは、こうした細胞のはたらきをサポートする役割を持っており、成長期の子どもにとって非常に大切です。

――ビタミンDが不足すると、体にどのような影響があるのでしょうか。

 ビタミンDが足りなさすぎると「ビタミンD欠乏症」といって、骨がもろくなって骨折しやすいなどの症状が表れることがあります。もっと症状が重くなると「くる病」(骨軟化症)という病気につながることも。成長期に骨が正常に発達しないため、脚が変形して歩けなくなったり、身長が伸びなくなったりします。

 東京大学の研究によると、「ビタミンD欠乏症」、または「ビタミンD欠乏性くる病」と診断された子ども(0~15歳)は大幅に増えています(※2)。2009年には人口10万人あたり3.88人だったのが、14年には同12.30人になっていると発表しています。この論文には私の周りの医師たちも驚きました。栄養状態の悪い時代に多かったくる病が、今これだけ増えているのか、と。

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越膳綾子
ライター 越膳綾子
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