神山さんの祖父がバナナワニ園の着想を得たのは昭和30年頃。まだ太平洋戦争の敗戦から10年、復興の兆しがようやく見え始めた時期だ。当時バナナは庶民にとって珍しく、あこがれの食べ物で、それを扱うテーマパークがあれば「子供たちが喜ぶだろう」と考えた。しかし、バナナだけで事業が成立するのかという迷いがあり、たまたま知人のつてでワニが手に入り、世にも珍しいバナナとワニの動植物園が誕生したのだという。
「ワニやバナナの情報を仕入れるのも難しい世相で、苦労の連続だったと聞きます。そんななか、祖父は自身で海外を周り、マナティーをはじめとした動植物を増やしていきました。私が園を継ぐか悩んでいた時、祖父とともに園を支えた祖母から『あなたならできる』と言われました。開園時の祖母は私と同い年。これに勇気をもらい、決断しました」
動植物の飼育に関しては長年携わってきたスタッフたちが支えてくれるが、試行錯誤の日々が続く。神山さんは今回のマナティーの名前の募集を通じて「たくさんのお客さまに知っていただき、来園して欲しい」と語る。
「現職についてから知ったのですが、専門家によると飼育下のアマゾンマナティーを見られる施設は世界でもほとんどないようです。とても人懐っこく、愛嬌のある動物。ぜひその魅力を多くの人に感じていただきたいです」
マナティーの名前の募集は5月7日まで。園を訪れなければ名前の応募はできないとのことで、神山さんいわく「ぜひ表情やしぐさを見て考えてもらえたら嬉しい」。このゴールデンウイーク、興味がある人は足を向けてみてはいかがだろう。(取材・文/dot.編集部・小神野真弘)