熱川バナナワニ園で飼育されているアマゾンマナティー。約半世紀の間名無しだった (C)熱川バナナワニ園
熱川バナナワニ園で飼育されているアマゾンマナティー。約半世紀の間名無しだった (C)熱川バナナワニ園
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園に展示された名前を募集する貼り紙
園に展示された名前を募集する貼り紙

 伊豆の熱川温泉が誇るシュールな名所、「熱川バナナワニ園」をご存じだろうか。飼育・展示するワニの種類は地球上の全21種のうち16種類と、“世界一”の充実度を誇る動植物園だ。

 今年9月にオープンから59年を迎える同園が、飼育中のアマゾンマナティーの名前を募集している。マナティーは推定54歳、園で暮らし始めて48年になる古株だ。

 さまざまなツッコミが頭をよぎる。バナナワニ園なのにマナティーがいたのか。約半世紀の間、なんと呼ばれていたのか。なぜ今になって名前を募集するのか。同園の専務取締役・神山浩子さんに話を聞いた。

「園の名前がバナナワニ園なので、お客さまから『マナティーいたんだ』とよく驚かれるんです。当園で見られることと同時に、この動物をめぐる保護活動についても知ってほしいという思いもあり、今回募集に踏み切りました」と神山さん。募集は3月から始まっており、4月末の時点で1200案近くの応募があるという。

「マナティーを見たお客さまからはいつも『名前は何?』と尋ねられていました。バナナワニ園は個人経営の動植物園で、私の祖父がつくり、マナティーの飼育を始めたのも祖父。その後、父が経営を引き継いだのですが、なにぶん古い世代の人たちですし、田舎の気風もあったのか、マナティーに名前をつけようという話は出なかったようです」

 その間、園のスタッフはマナティーを「マナオ」や「僕ちゃん」など、思い思いの名前で呼んでいたという。こうした個人経営ならではのゆるさがバナナワニ園の魅力といわれるが、しかし何故いまになっての募集なのか。

「実は昨年父が亡くなり、私が経営を引き継ぎました。しかしそれまで私は全く別の業種の会社員をしており、現職に就いてマナティーの名前を知りたいというお客さまが多いことを知ったのです。それで、募集をしようと」

 60代なかばでの急逝だった。神山さんはまだ30代。彼女にとっても青天のへきれきで、園を継ぐことには葛藤があったという。「動物園経営は素人ですし、15年以上続けた仕事を辞めるのにも、やはり不安はありました」

 だが、開園当初の祖父の意志を引き継ぎたいという思いが背中を押した。

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