現役引退記者会見でキム・ヨナへの思いについて問われた浅田真央は「本当にお互いにいい刺激を与えながら、もらいながら、ずっとスケート界を盛り上げてきたんじゃないかなというふうには、思っています」と答えている。
浅田真央の競技人生はさまざまなドラマが紡がれたが、そこには好敵手の存在があった。韓国のキム・ヨナだ。バンクーバー五輪でヨナは金メダルを、浅田は銀メダルを獲得。圧倒的な強さをみせたヨナに、トリプルアクセルを3本成功させながら敗れた浅田の涙は、浅田のソチ五輪へ至る道の序章でもあった。
浅田とヨナのバンクーバー五輪シーズンを見れば、二人の目指す演技の違いは明白だ。ヨナが目指すのは破綻のない演技だった。現役時代「ミスター・トリプルアクセル」と呼ばれたブライアン・オーサーコーチに師事した当初、ヨナが望んだのは、浅田の持つ大技・トリプルアクセルの伝授だったという。
しかし、オーサーコーチに説得され、ヨナは大技にチャレンジするのではなく、自らの持つ3回転-3回転に磨きをかけ、演技の完成度を上げていく方向に転換する。ヨナの最大の武器である3回転-3回転は、セカンドジャンプも高さが落ちない男子顔負けの飛距離で、圧倒的な出来栄え点を誇った。