2016年4月14日、熊本地震が発生。損保ジャパン日本興亜は翌15日、熊本県に「災害対策本部」を設置した。地震保険金は生活再建に不可欠な資金だ。対策本部では一日でも早く、ひとりでも多くの契約者に保険金を支払えるようにと奮闘を続けていた。
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6月初旬、熊本地震の災害対策本部は総勢約700人になっていた。そのうち熊本支店8階には常時、約200人が詰める。
対策本部を8階に設けるまでに支店内では侃々諤々(かんかんがくがく)の議論があった。エレベーターが止まっている状況では、低い階のほうが都合はいい。しかし、15年8月、熊本など九州地方を襲った台風15号の災害対策本部が1階にあった。結局、階段の上り下りには苦労するものの、広いスペースを確保できる8階に決まった経緯があった。



災害対策本部は契約者からの電話を受け付ける社員、保険金支払いの書類を作成する社員でごった返している。そのなかに現場責任者として部下に次々に指示を与える林祥晃の姿があった。
林の肩書は「中国保険金サービス第一部部長」。その役職を持ったまま、現場責任者に任命された。熊本の対策本部では林で2人目。地震発生からひと月後の5月19日、熊本に来た。
「当時、お客さまの請求に対する保険金お支払いの完了率は50%強でした。それが6月中旬には90%を超えました」(林)
損保ジャパン日本興亜は、住宅金融支援機構の融資を利用する人が加入する特約地震保険の取り扱い幹事会社だ。地震保険の契約件数は他の損保会社より多いとされる。にもかかわらず、地震から2カ月後の段階で支払い完了率が90%超とは驚異的だ。3千件を超える支払いをした日もあったという。
「菊池デポ(菊池市)をはじめとする実調(実地調査)拠点を確保できたことが最大の要因です」(林)
地震後、連絡がない契約者に対して確認の電話をかけ、社員が契約者宅を訪問した結果でもある。
「地震保険に加入していることをご存じなかった方もいらっしゃいました」(林)
保険をかけていた夫が地震で亡くなり、残された妻に連絡をとったことがある。かなりの額の保険金を受け取れることがわかり、疲れ切ったその妻から感謝の言葉をもらったという。(アエラムック教育編集部・西島博之)
※AERA企業研究シリーズ「損害保険ジャパン日本興亜 by AERA」から