香港の活動家らによる尖閣諸島上陸は、彼ら全員を強制送還することで決着を見た。が、竹島の領有権問題については国際司法裁判所(ICJ)に提訴することを決めたものの、韓国は強く拒絶。日本政府はこのところ「領土問題」に頭を悩ませている。この現状を、2010年9月の中国漁船衝突事件で、「sengoku38」を名乗って衝突映像を動画サイトに流出させた元海上保安官、一色正春氏はこう語る。

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 今後、中韓が相まって増長し、ロシアも行動を起こすかもしれません。

 中国とは経済的に、うまくやっていきたいという人も多いでしょう。戦争だって当然、避けたい。しかし日本は、どんなことをしても尖閣を守るという意思を示し、抑止力を働かせることが急務です。例えば、もし米軍の第7艦隊が尖閣沖に常駐すれば、中国は行動を起こせません。現実的には日本自身が「無茶すれば大きな痛手を被る」と思わせることが抑止になるのです。

 いじめ問題と同じようなものです。「脅せばカネを出す」「言うことを聞く」と思われたら相手はエスカレートするもの。何があっても尖閣を守る、という意思を持ち、中国からの圧力や妨害に耐える覚悟を、日本が決めるかどうかなのです。

 日本は目先の「争い」を避け、問題を先送りし続けてきました。このままでは最悪の場合、中国との争いをギリギリまで避け続けたチベットなどのように、日本が中国の「自治州」になってしまう可能性も否定できません。憲法9条によって「平和」が守られるという人もいますが、この人たちは日本がそうなってもかまわないと思っているのでしょうか。

 中国が好きか嫌いかという矮小な話ではなく、中国という大国が日本の領土を狙ってきているという現実を直視し、国民ひとりひとりが考えなければいけない問題です。

 一見、日本のためにと言いながら、私欲に走り、国益を損なう方向にリードしていく政治家やメディアにも注意が必要です。海上保安庁が本気で対応すれば尖閣上陸など簡単に防げることなのに、それを許さない「何か」が、わが国にはあるのです。

※週刊朝日 2012年8月31日号