あまり知られていないが、日本の家庭用トイレットペーパーは、日本工業規格(JIS規格)で直径12センチ以下と定められている。長さ225メートルのペーパーを直径12センチ以内に巻き切るのは簡単なことではない。それを実現させたのは、ひとえに技術革新によるものだった。決め手となるのは、ペーパーの薄さ以外に、巻きの強さ、つまり、しっかり巻くことだ。
トイレットペーパーは通常、直径2メートルほどの巨大で長いロールを、もう一度JIS規格の直径12センチ以下の小さなロールに巻き直し、商品サイズ(長さ10センチ程度)に切断して作る。今回、組合は製造元の静岡県富士市のメーカー、丸富製紙と巻きの工程を見直し、薄いペーパーを高密度で巻くことに成功した。高密度になると切りにくい、という難点もあったが、切断の方法を工夫することでクリアした。
また、薄くても柔らかい肌触りを実現するため、表面に特殊な加工を施す、切れやすいように繊維の並びを横方向にする、といった細かい点にも気を配った。こうして、長さと肌触りの良さを兼ね備えた商品が完成したのだ。ちなみに、1ロールの重さは約400グラム。一般的なロール(平均150グラム)よりかなり重いが、ホルダーが壊れることはない。
そして、特筆すべきはこの直球すぎるネーミングだ。担当者によると、もともと、シンプルな商品名にしようと考えていたが、“こうべ発”ということで、関西弁を盛り込んだという。その根底には、「関西人のツッコミ」への期待もあった。「めっちゃ長い、って聞いたら、『どんだけ長いねん!』ってツッコミたくなるじゃないですか」(担当者)
現在はコープこうべの店舗や宅配(兵庫県内と京都、大阪の一部)でのみ取り扱っているが、18年以降、日本生協連に加盟する全国の生協で販売することも検討している。取り換える手間が省けて経済的、かつ災害への備えとして役立ちそうなトイレットペーパー。自分で使うのはもちろんだが、ギフトやお土産にしても、意外と喜ばれるかもしれない。(ライター・南文枝)