もちろん資金力はトップチームの人件費だけでなく、下部組織の育成や施設の充実にもつながるが、選手の補強はチーム力や注目度を引き上げる大きな力になりうる。今季からは外国人枠のルールも改編され、5人までクラブに所属させることができる(1試合の出場は3人+アジア人枠1人まで)。サッカーファンなら誰でも分かる様なスター選手を買うには十分な資金とは言いがたいが、これまでより外国人選手の市場価値の平均値が大幅にベースアップされるはずだ。

 上位の傾斜分配金を見込んで高額な選手を補強するのは1つリスクになるが、それも含めてファンの関心を呼ぶはず。同じJ1でも順位により最大で十数億円の差が出るため、上位のビッグクラブ化が進み、これまでよりリーグ内の「格差」が出てくることで、特にJ1は1ステージ制に戻る上で、優勝争いの寡占化による弊害を懸念する声もある。しかし、これまでは優勝タイトルやACLの出場権、残留争いに絡めない中位チームの“中だるみ”が存在したことも事実。傾斜分配金の額が大きければ、1つでも順位を上げることにより意味が出てくるメリットは小さくない。

 より大きな問題はリーグ戦のウェートが重くなり、相対的にカップ戦やACLが軽視される傾向が強まるということ。もちろん2008年にガンバ大阪が優勝して以降、8年間も遠ざかっているアジア王者に輝き、UAEで行われるクラブW杯に出場すれば名誉だが、ACLの優勝賞金は3億円で、仮にクラブW杯で優勝してもJリーグの優勝で得られる金額の半分に過ぎないのだ。

 昨季から「ルヴァン杯」に名称が変更されたJリーグ杯も優勝賞金は1億円で、今のところ増額の発表は無い。天皇杯も同じ1億円で、翌年の富士ゼロックス・スーパー杯で勝てば3000万円、負けても2000万円が得られるが、それでもリーグ戦との格差は大きい。ルヴァン杯や天皇杯はCSや地上波で放送される見込みだが、これらの中継がDAZNでの放映権に含まれない以上、そこから直接的に分配金を引っ張ってくることはできない。今後、Jリーグがどう対策を立てて行くか興味深いところだが、当面は難しい課題の1つになるのではないか。(文・河治良幸)