目黒不動尊の水かけ不動。後ろは独鈷の滝
目黒不動尊の水かけ不動。後ろは独鈷の滝
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目赤不動尊のお堂(南谷寺境内)
目赤不動尊のお堂(南谷寺境内)
金剛院長崎不動のキャラクター「ナータくん」
金剛院長崎不動のキャラクター「ナータくん」
荒川にある袈裟塚耳無不動
荒川にある袈裟塚耳無不動
「歌舞伎十八番 不動」(都立中央図書館特別文庫室所蔵)
「歌舞伎十八番 不動」(都立中央図書館特別文庫室所蔵)

 2016年も残すところあとわずか。今年は年初めの予想通り、大きな波乱と発覚が世界中で起きた1年となった。歴史的な統計を見ても、申(さる)年は混乱に見舞われることが多い年と知られているだけに、大方の予想を裏切らない展開に、ある意味歴史の輪廻(りんね)を感じさせてくれる年だったといえよう。

●「酉」の漢字が持つ意味とは

 さて、2017年は酉(とり)年。もっと詳しくみると「丁酉(ひのととり)」という干支34番目の年になる。「酒」「酩酊(めいてい)」「酎」「酌」といったお酒関係、「酪」「醤」「酢」といった発酵食品関係で使われることを見てもわかるように、「酉」は、“ものが熟した状態”を指す漢字だ。つまり酉年は、物事が熟す年ということになる。

 前年の丙申(ひのえさる)は「混乱」の年とも言われるが、この混乱の結果が出る年ともいえるのかもしれない。加えて「丙」が「大きな火」を意味し「丁」は「小さな火」を意味することから、とろ火で発酵を促進中とも読み取れる。さてさて、2017年は物事が熟しての結果待ちの年となるのか、はたまた熟しすぎて爆発する年になるのか、なかなか興味深い「丁酉」の年になりそうだ。

●「酉年」の守護仏は「不動明王」

 ところで酉年生まれの人はめんどう見がよいため、近親者の介護などを押し付けられやすいという説がある。これは、酉年の守護仏である不動明王にも言えることだ。

 大日如来の別の姿とも言われている不動明王は、石の台座に乗って背中に炎をまとい、右手に剣、左手に羂索(けんさく、簡単に言えば“縄”)を持つ。ほとんどは牙をむいた表情で憤怒を体中から発散させている。仏像に興味のない人でも、すぐに見分けがつく姿をしている。

 この不動明王、日本では“お不動さま”との愛称で呼ばれるなかなか人気の仏さまである。いったいどんな仏さまなのか。

●お不動さまと歌舞伎の関係

 お不動さまを祀るお寺として、何より有名なのは千葉にある成田山新勝寺だろう。こちらは、平安時代の武将・平将門の乱を制圧するための祈願寺という起源を持つ。

 時代は下り江戸時代、後継ぎに恵まれなかった初代・市川團十郎が、寺ごもりののち、長男を授かったことからお不動さまを信心するようになる。以来現代に至るまで市川團十郎と成田山新勝寺には、因縁が続いている。

 ちなみに、歌舞伎にある「見得(みえ)」のポーズは、不動明王の姿形を写したものが始まりなのだとか。二代目・市川團十郎の「不動の見得」のにらみは、病気治癒に御利益があるとの評判が立ち、市井でのお不動さま信仰のブームに火をつけることになった。いまでもこの團十郎の「にらみ」を見ると、1年風邪をひかないなどと言われている。

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