2児の父でもある、歌舞伎俳優・市川海老蔵。家族を持つ前の自分はダメだったと評した彼が、『アエラスタイルマガジン 33号』(朝日新聞出版)で語った、闘病中の妻のために叶えたい夢とは……。インタビューの一部を紹介する。
* * *
2013年春から市川海老蔵はブログをスタートさせている。日々更新どころか、一日に何回も書き加えられる。麻央さんをはじめ家族との出来事もしばしばつづられる。3年余りで早くも3万回に達しようという驚異的な更新数なのだ。
「続くかどうかわからないと始めたのに、休むことなく続いてますね」と向けると、思わぬ答えが返ってきた。
「いや、歌舞伎をやっているほうがつらいのよ。歌舞伎を毎日やっていることを考えたら、こんなこと、なんでもないの。よく、一日何回もできるねと言われるけど、なんとも思わない。僕、子どものときそれぐらいつらい経験をしてたんで。歌舞伎の幼少期は本当につらいですよ。歩行困難にもなった。子どものときは、それがあまりにもつらくて、ダメで、反発に変わっちゃった。だけど、本当に子どもにできないようなことばっかりやらされるんです。だって僕、中学1年生で椎間板ヘルニアになっている。普通、ならないでしょ」
そう、海老蔵は、1983年に5歳で初お目見得してから、もう33年以上歌舞伎の世界に身を置きつづけてきたのだ。稽古、精進、約束事の伝統文化のなかで、生きてきた息苦しさは傍からは想像もつかない。
ブログでは、ジョギング、ウオーキング、サウナ、スイミング、トレーナーとのトレーニングのことなどもしばしば記述される。過酷な芸に耐え得る身体を維持するための投資が欠かせないのだ。とりわけ、ここ数年は、身体づくりへの意識はいっそう強くなっている。
「スポーツ選手はオフの過ごし方がそれぞれあるんですけど、基本的にオフはみんな休むんです。どこかへ行ったり、ちょっとお酒を飲んだり、リラックスしたり。でも、それをやるとダメなんですよ。オフにどれだけ頑張れるかが、次の仕事に対してのポテンシャルアップですから。オフでダラけると、翌シーズン常に全開でいけないんです。イチローさんのこと、僕、ちょっと勉強しているんですけど、オフのときもずっとやるんですって。だから、この数十年間、あんな偉業を成し遂げているんですよ。何が一番すごいって、ケガもしないじゃないですか。爪の垢を煎じて飲みたいなと、僕も休みは朝6時から準備運動をしています」
歌舞伎において、体力は絶対だ。アスリート、いやそれ以上のものが要求されることもある。海老蔵が歌舞伎役者のフィジカルをこう解説してくれた。