「あまり良い終わり方ではなかったので、ちょっとこう……生き返るのには時間が必要ですね」。
不完全燃焼の終幕に落胆を隠せぬ様子ながらも、錦織は「結果的に見れば、一番良い年だったと思う。こうやって(ランキング)5位で終われたというのも、価値のあること」と今季を総括する。長く過酷な11カ月のツアーの中で得た58の勝ち星は、錦織にとってキャリア最多。その中には、リオ五輪の3位決定戦でラファエル・ナダル相手に手にした勝利や、全米オープン準々決勝で、マリーからフルセットの死闘に末にもぎとった殊勲の星も含まれる。
「年を重ねるごとに、テニスが安定してきている。アンフォーストエラーが減っていたり、ミスが減っているのが一番だと思います」
上位勢にも勝てるようになった理由は、ショットの質やプレーそのものの底上げにあった。
「試合数ももちろん重要ですし、一番勝った年というのは大きな意味があります。今年はマスターズの決勝に行けたり、全米オープンでベスト4にまた入ったり。そういうのが、徐々に増えてこないといけないし、それが今年は、去年よりできているところだと思います」
「ちょっとずつ積み重ねていけたらいいかなと思います」――まだまだ続く長い道のその先に、錦織は目を向けた。
今季のジョコビッチとの6度の対戦はすべて黒星に終わったが、価値ある「積み重ね」であり、今後につながる貴重な経験値となる。(文・内田暁)