晩秋の候、今年の「プロ野球12球団合同トライアウト」が、11月12日に甲子園球場で開催される。今年は計69選手が参加する予定。その中には、1軍での実績が十分な選手も数多く含まれている。
投手陣では、まずはヤクルトを戦力外となった新垣渚が目に付く。世代屈指のストレートと打者から「消える魔球」と言われたスライダー、通称バニッシュボールで2004年に最多奪三振のタイトルを獲得し、同年から3年連続2ケタ勝利を飾った剛腕だった。加齢とともに投球スタイルを変えて生き残って来たが、ソフトバンクからヤクルトにトレード移籍して3年目の今季は、6試合に先発して1勝2敗、防御率6.67と結果を残せなかった。現在36歳。かつての剛速球を投げられないことは自覚しているが、それでも野球への情熱は冷めることなく、新天地での活躍を願ってトライアウトの舞台に臨む。
新垣と同じ松坂世代として、DeNAを戦力外となった久保裕也投手と長田秀一郎投手の2人にも注目だ。02年のドラフト自由獲得枠で巨人に入団した久保は、1年目から先発、リリーフの両方をこなして38試合に登板。タフさと万能ぶりで10年には球団最多の79試合に登板し、翌11年にはシーズン途中から抑え役を任されて20セーブを挙げた。その後、故障で出番を減らして15年に戦力外。拾われたDeNAでも9試合の登板に留まり、2年連続の戦力外となった。現役続行は自信の表れ。豊富な経験はチームに還元できるはずだ。長田も自由獲得枠でプロ入りし、以降西武で11年、トレード移籍したDeNAで4年、中継ぎとして多くの修羅場をくぐってきた。同世代の選手に刺激を受けながら、もうひと花咲かせるために現役続行を強く希望している。
強い想いは、他の選手も同じだ。田中浩康内野手はヤクルト球団からの2軍コーチ就任の打診を断って現役続行を希望。現在34歳。近年は山田哲人の台頭で出番を減らしたが、12年にベストナインとゴールデン・グラブ賞を受賞した実力は本物で、年齢的にもまだまだ活躍できるはずだ。当初はトライアウトを受けない意向だったが、「どこの球団でも拾ってくれるなら」と覚悟を持って甲子園の土を踏む。