ロリータ包丁「Lappin」(ラピン、右)とゴスロリ包丁「JULIETTE」 (ジュリエット)の仕掛け人、匠工芸代表の折井さん
ロリータ包丁「Lappin」(ラピン、右)とゴスロリ包丁「JULIETTE」 (ジュリエット)の仕掛け人、匠工芸代表の折井さん
なんと、スタッフにコスプレをさせて包丁を擬人化してしまった(匠工芸提供)
なんと、スタッフにコスプレをさせて包丁を擬人化してしまった(匠工芸提供)
ロリータ包丁にふんしたスタッフのSuzuさん(右)とゴスロリ包丁担当のmahomyさん(匠工芸提供)
ロリータ包丁にふんしたスタッフのSuzuさん(右)とゴスロリ包丁担当のmahomyさん(匠工芸提供)
鍛冶職人の田中さんが、真っ赤になった鉄を打ち付け、刃の部分を作る(匠工芸提供)
鍛冶職人の田中さんが、真っ赤になった鉄を打ち付け、刃の部分を作る(匠工芸提供)

「外国人に本気のクレージーを伝えたい」

 その一心で作られた「ロリータ包丁」と「ゴスロリ包丁」が話題を集めている。3つのハートがついた刃や柄の先からちょこんと顔を出すピンクのウサギがかわいらしい「Lappin」(ラピン)と、チョウの羽をかたどった刃に黒いレースカバーを付けた柄がエレガントな「JULIETTE」(ジュリエット)だ。2016年3月に発表されるやいなや「衝撃を受けた」などとSNSで広がり、1日で約8万リツイートに達した。

 仕掛け人は兵庫県南西部、播磨地域の、プラスチック加工や看板などを手掛ける匠工芸(高砂市)代表の折井匠さんとデザイナーの藤原千栄さん、三木市の鍛冶職人、田中誠貴さんだ。なぜこのようなぶっ飛んだアイテムが生まれたのか。折井さんに聞いてみた。

 包丁製作のきっかけは、14年12月、田中さんからかかってきた1本の電話だった。

「日本の伝統工芸である包丁をもっとたくさんの人に知ってもらいたい、どうにかしたい」

 田中さんは、金物の町、三木市で明治時代から続く「田中一之刃物製作所」の四代目。プロの料理人が使う包丁を1本1本手打ちしている。しかし、「包丁を作って料理人に渡すことも大切だが、一般の人にも包丁の良さを知ってもらえるアイデアはないか」という悩みを抱えていた。

 そんな時、三木市のナメラ商店街入り口にある、羽柴秀吉や別所長治といった戦国武将らを“もえキャラ”化した縦5メートル、横8メートルの巨大看板を手掛けた匠工芸のことを知った。「何か面白いものが作れるかもしれない」と思い、折井さんに連絡したのだ。

 折井さんも、常日頃から「日本の職人、ものづくりを『すごい!』と言ってもらいたい」と考えていた。「今までの包丁の概念を変えてほしい。ぶっ飛んだ、振り切ったやつを作ってほしい」という田中さんの思いに応えようと、デザイナーの藤原さんと相談。そこで10年来のゴシックロリータファッションの大ファンである藤原さんが出してきたのが、2つの包丁のデザインだった。

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