そのタイブレークで錦織は、ミスが続き自らを窮地に追い込んでしまう。いきなり相手に許した4連続ポイント。5-3の局面では相手にエースを叩き込まれ、6-3で3本連続のマッチポイントを握られた。ここからは自分のサービスが2本続くも、一つでもミスが出るとその場で敗者となる絶体絶命の淵――。
それでも錦織は、「相手の集中力が下がる場面も絶対にある」と信じていたという。それは約4カ月前のマイアミマスターズでも、やはり相手に5本のマッチポイントを握られながら、逆転勝利を手にした過去があったからか。
同時に、この局面で緊張が見られたのは、相手のモンフィスも同様だった。錦織が攻めの姿勢を貫き、2本のマッチポイントを凌いで6-5とした直後、モンフィスは、セカンドサービスをネット真ん中あたりに叩きつける致命的なダブルフォールトを犯す。続くポイントでは錦織が16本の打ち合いを我慢強く重ね、最後はドロップショットからフォアのパッシングショットへとつなげる心憎いまでの創造性と冷静さで、初のマッチポイントを奪い取った。
そして、試合開始から2時間53分。モンフィスのこの日51本目となるミスショットが、準々決勝の死闘に終止符を打つ。その瞬間、手で顔を覆った錦織は、咆哮と共に自身初となるオリンピックベスト4への扉を開いた。