この「四万六千日」の人出に目をつけたのが、ちょうどこの時期がかき入れ時になるほおずき売りたちで、境内に露店を出し始めたところ、これが大当たり。いつのまにか「ほおずき市」=「四万六千日」となったというわけだ。
さて、「ほおずき市 四万六千日」にお寺で授与される特別なお守りがある。それが雷除けである。もちろん名前の通り、雷に合わないように…という祈りが込められたものなのだろうが、「心乱れることに遭遇しても対処できるよう」との意味も込められている。コンピュータが生活や仕事の中心となった現代では、落雷の被害は深刻なので、文字通り雷除けとしても活用できそう。
このお守りにも誕生秘話がある。「赤とうもろこし」を吊るしていた農家だけが落雷被害から逃れたため、その後「赤とうもろこし」が雷除けとして売られるようになった。ところがある年、とうもろこしが不作で雷除けとして売られなかったことから、人々が不安に思い寺へ何か代わりになるお守りを要望したところ、この兜のような形の雷除けが誕生した。写真は護国寺と浅草寺のもの。せっかく縁日にお出かけならば、雷除けの形だけでも見てみても損はない。
いろいろ調べてみたが「観音さまの功徳日」と「ほおずき市」がリンクしている土地はなぜか東京に限られているようだ。そして最近でこそ「ほおずき市」=「浅草寺」というイメージが強いが、発祥の地は実は東京タワー近くにある愛宕神社である。
愛宕神社の「ほおずき市」は、他と比べていろんな点でユニークだ。ほおずき市の起源も、他とは異なり、江戸時代、愛宕神社に自生するほおずきを煎じて飲むと子供と女性の病気に効くという噂が広まり、境内でほおずきの市が立つようになったのがこちらの「ほおずき市」の始まりであるという。ちなみにこちらの「ほおずき市」は千日参りの6月23・24日と同日に行われる。愛宕神社といえば前回の記事でご紹介した「夏越の祓」の茅の輪が立つのも、千日参りの日だ(他の寺社では6月30日が「夏越の祓」)。何もかもが他の寺社とは違っている独特の興味深い神社である。
最後に東京で開催されるおもなほおずき市を記しておこう。
7月8・9日
・朝日神社「ほおずき市 」(東京都港区六本木)
7月9・10日
・浅草寺「四万六千日 ほおずき市」(東京都台東区浅草)
・護国寺「四万六千日 ほおずき市」(東京都文京区大塚)
・光源寺 駒込大観音「ほおずき千成り市」(東京都文京区向丘)
・信松院「四万六千日 ほおずき市」(東京都八王子市)
7月16日〜18日
・深大寺「鬼燈祭り」(東京都調布市深大寺)
7月23・24日
・こんにゃくえんま 源覚寺「文京朝顔・ほおずき市」(東京都文京区小石川)
7月27・28日
・神楽坂まつり内ほおずき市(東京都新宿区神楽坂)
(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)