3代将軍・家光の時代、この山王祭の祭礼行列が江戸城内に入ることを許され、これを歴代の将軍たちが上覧したことから「天下祭り」と呼ばれる由縁ともなった。現在でも、この祭礼行列のルートには皇居が含まれており皇居坂下門で参賀と神符献上が行われている。

 総勢500人からなる祭礼行列の長さは300メートルにも及ぶが、山王祭が「だだっ広い」と詠まれたのはその巡幸路エリアの広さにもある。朝7時30分に日枝神社を出発する祭礼行列は、霞が関から麹町、四谷、市ケ谷を通り、国立劇場、皇居を巡って、丸の内、八重洲、日本橋を抜け、銀座、日比谷までも足を運ぶ。日枝神社への戻りは夕方5時近くとなる。もちろん、各所で休憩はするのだが、平日の東京駅や銀座、内堀通りを移動する姿はとにかく目を引く。

 神輿担ぎの勇壮さを競うのが江戸の祭りの“粋”と言われる中にあって、これほど“雅”で格式にのっとったお祭りは、江戸では珍しいのではないだろうか。

 日枝神社の宝物殿にある記録絵によると、江戸時代の祭礼行列に象もいたようだが、4つの梯団に分かれた現代の行列には、お神輿や山車のほか、獅子頭や、神馬、干支車などととにも舞姫、楽人、巫女のようなきらびやかな人々が登場する。

 仕事の途中に「ちょっと見てみようか」とお考えなら、日枝神社のホームページには、祭礼行列の巡幸路と時間が掲載されている。また、祭礼行列の位置情報が確認できるアプリ「日枝神社デジタル祭礼図」もある。

 おすすめの見物場所は皇居付近か銀座あたり。東京に残された「平安絵巻」は来日中の外国人にもきっと喜ばれるにちがいない。(文・写真:『東京のパワースポットを歩く』・鈴子)

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