発売後、1月あまりで20万枚が完売したという「ストレッチパンツ」
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開閉時に指をはさみにくくしたベビーバギー
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重さ80キロまで耐えられる「座れるおもちゃ箱」
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ランドセルやリュックサックの上から着られるレインコート(西松屋チェーン提供)
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社内にあるシミュレーション店舗。全国の店舗への効率的な陳列方法の指示や研修などに役立っているという
社内にあるシミュレーション店舗。全国の店舗への効率的な陳列方法の指示や研修などに役立っているという

 子育て世帯の強い味方、西松屋チェーン(本社・姫路市)。子ども服やグッズを安価で販売しているのが魅力だが、近年はプライベートブランド(PB)商品の開発にも力を入れている。その一つ、伸縮性が売りの「ストレッチパンツ」(税込み879円)は、2015年9月の発売後、1カ月あまりで20万枚を売り上げるヒット商品となった。実はこれ、元電機エンジニアが開発した商品なのだ。

 見た目はどこにでもあるパンツだが、伸縮性に優れているためはかせやすく、脱がせやすい。股上が深いため、しゃがんだ時におしりが出にくいという利点もある。オムツをしていることが多いベビー(1~3歳)用はおしり周りをゆったりめにするなど、心遣いもありがたい。色の種類が豊富で、ピンクや緑、黄色、青、紺など約10色を販売する。

 開発を担当したのは、男児アウター商品部長の黒崎敏彦さん。元大手電機メーカーの技術者だ。

 同社は90年代にPB商品の販売を開始。企画や製造は取引先のメーカーや商社にまかせきりだったため、不良品が出ると迅速に対応できないなどの問題があった。

 そこで09年以降、「社内にものづくりや生産管理ができる人材を集めよう」と、積極的にパナソニックや三洋電機、ソニーといった大手電機メーカーなどで働いていた技術者の採用を開始。リーマン・ショックで家電業界が社員の大規模リストラを進めたのも、人材を集める上で追い風となった。現在、西松屋社内の元技術者は80人を超える。黒崎さんもその1人だ。

 黒崎さんは、12年1月の入社後に参加した社外セミナーで、「80%の人が300日使う」「着心地が良く着脱しやすい、手入れが簡単」といった条件を兼ね備えた商品、つまり、「多くの人が毎日のように使ったり、食べたりする商品」を開発すべきだと考えた。 試行錯誤を重ね、13年1月にトレーナーとロングパンツをそれぞれ3種類企画。そのうちの1つが冒頭のストレッチパンツの土台となったのだ。

 トレーナーとロングパンツの売れ行きは「可もなく不可もなく普通」だった。「もっとシンプルな構造にして価格を下げてみよう」と、パンツのポケットなどについた飾りステッチやおしゃれなタグをなくし、「売り場で目立つように」と色の種類を2色から7色に増やした。こうして翌年の試験販売に臨んだところ売れ行きは好調で、全国の店舗で売り出すこととなった。

 ここで問題となったのが、どれだけ作って販売するかだった。試験販売の実績から10万枚の計画を立てたが、元技術者でもある大村禎史社長に報告すると、「販促を強化すればそれ以上はいける」と強気な発言が飛び出した。最終的に20万枚を売り出す計画となり、黒崎さんや担当バイヤーらは半信半疑のまま、テレビCMや新聞の折り込みチラシを手配、販売を開始した。

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