前人未到の9連覇を果たすも、メンタル面の課題を口にした内村(撮影・松田優)
前人未到の9連覇を果たすも、メンタル面の課題を口にした内村(撮影・松田優)

 4月3日、体操の全日本選手権個人総合の決勝が行われ、内村航平(コナミスポーツクラブ)が総合得点91.300点で優勝し、9連覇を果たした。2位には白井健三(日本体育大)、3位には加藤凌平(コナミスポーツクラブ)が入った。

 前人未到の9連覇を果たした内村。だがこの日、その表情は晴れやかとはいかず、インタビューでは「応援に来てくださった皆さんに申し訳ない。自分に怒りすら感じる」とコメントしていた。その理由は、今大会の出来にあった。

 今大会、内村は得意種目のゆかからスタート。大きなミスなくまとめていたが、ラストのタンブリングの着地でふらつくなど、完璧な演技とはいかなかった。続くあん馬では危なげない演技を披露するも、跳馬では着地で前につんのめり、両手をついてしまうという大過失。得意種目であるはずの平行棒でもミスが出た。ラストの鉄棒では連続での離れ技を決め、完成度の高い演技を披露したものの、全体的には精彩を欠いた印象だった。

 そうした出来ゆえの、冒頭のコメントだった。内村は今大会を振り返り、メンタルでの課題を挙げ次のように話した。

「今回は全体的に試合の感じが自分の中で出ていなかった。通し練習をやっているくらいの感じで、いまいち気持ちが盛り上がらなかった。かなり(大会を)経験してきているので、世界の舞台じゃないと気持ちが盛り上がらないというのもあるんですけど……そこは自分でなんとかしていかないと」(内村)

 しかしながら五輪イヤーの今年、このタイミングでミスが出たことについて「前向きに考えれば、オリンピック前までにこういうミスが出ておけば、本番までに修正していける」とも話していた内村。すでに5月に行われるNHK杯を見据え「NHK杯では(周りの人に)大丈夫だと思ってもらえるように演技を仕上げていきたい」と話した。

 一方、そんな内村を「順位を見た時に、開いた口がふさがらなかった」というほど驚かせたのが、白井健三だ。今回、見事に準優勝を飾った白井だったが、最終種目のゆかを残した時点での順位は6位。この時点で3位の加藤との点差は1.2点、本来ならば挽回が難しく、表彰台すら届かないはずの差だった。大どんでん返しの原動力は、やはり得意種目での高得点だった。

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