高レベルで折れる人には特徴がある。それは、中レベルのストレスでは「優秀」とされていた人材が、突然折れてしまうことだ。
自衛隊には様々なレベルの訓練があるが、心身ともに強いストレスを与える訓練が多かったため、私がメンタル面の安全係となり、訓練開始、訓練中、訓練後のメンタルチェックとケアを担当することになった。
ある隊員は日ごろの勤務や能力を買われ、特別に推薦されて、数カ月にわたるこの厳しい訓練に参加していた。前半の厳しい訓練をトップクラスで終了し、その時の面接でも、「全く問題ありません」と答えていた。
私はそのロボットのような受け答えが気になり、訓練指揮官にその旨を伝えたが、指揮官は「彼は、部隊でも極めて優秀ですし、これまでの訓練もみんなを引っ張っていますから心配はいりません」ということだった。
ところが、訓練も後半に入って、一山超えたころである。その隊員が突然いなくなってしまったのだ。スタッフが必死に探し出し、私が面接をしてみると、いわゆる「うつ状態」に陥っていた。当然のことながら、訓練を外され、しばらく休養することになってしまった。
このように、中レベルのストレスでは高いパフォーマンスを上げ、涼しい顔をしていた人が、ある時突然不調に陥るのが高レベルストレスでの折れ方の特徴の一つだ。心身の不調のこともあれば、行動面でおかしくなることもある。
自衛官、警察官、役所の職員、教員など、まじめに勤務してきた人が痴漢や窃盗などを働くことがあるのは、このパターンが多い。「折れる」という言葉が持つ前後の連続性のなさは、この2つ目の場合のほうがより鮮明に感じる。
では、なぜ優秀な彼らは、このように突然「折れて」しまうのだろう。
■ストレスにやられるのではなく「疲労」にやられる
人は緊張すると疲労を感じないで仕事をすることができる。特に中レベルまで「よくできる人」の中には、疲労を感じない技術を高めてきている人が多いのだ。
中レベルまでのストレスは、問題解決力で何とかうまくこなせる。その時にエネルギーも使うが、それを「感じない」ように対処する。これが優秀な人の一つのパターンになっていることが多い。
その人が、高レベルのストレス状態に置かれるとしよう。