では、修飾語の長さが異なる場合はどうだろうか。

「血まみれになって逃げ出した賊を渡辺刑事は追いかけた」

 この文章では、「追いかけた」という述語にかかる二つの修飾語、「血まみれになって逃げ出した賊」と「渡辺刑事は」の長さが明らかに異なっている。これらを長い順に並べると、読点がなくても意味が通じるようになる。これは修飾語の順序に関する原則のひとつである「長い修飾語は前に、短い修飾語は後に」(略して「長い順」)に従ったもので、抵抗なく、誤解もなしに読むことができる。

 そこで、冒頭で紹介した文章をもう一度見てみよう。

「渡辺刑事は血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた」

 この文章は、「長い順」の原則とは逆に、短い「渡辺刑事は」が冒頭にくる「逆順」となっているため読みにくくなっている。では、「渡辺刑事は」の後に読点をうってみたらどうだろうか。

「渡辺刑事は、血まみれになって逃げ出した賊を追いかけた」

 これなら、誤解や読みにくさが軽減される。このことにより、「長い修飾語より短い修飾語が先にきた場合は読点をうつ」という第二の原則を立てることができる。

 このように読点には、決定的に別の意味になったり、正反対の意味になったりする可能性が秘められている。誤解や曲解を防ぎ、「読む側にとってわかりやすい文章」を書くためにも、この二つの大原則は覚えておきたい。

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