お笑いタレント河本準一さんの母親など、芸能人の親族が生活保護を受給していた問題が波紋を広げている。制度の見直しは本当に必要なのか。参院議員の片山さつき氏とジャーナリストの安田浩一氏が徹底的に"闘論"した。
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安田:河本問題が起きて以降、各地の福祉事務所や役所には、密告の電話が増えているそうです。「隣の家のアイツは生活保護を受けているのに酒を飲んでいる」とか「あの家は母子家庭なのにオトコの出入りがある」とか。感情的な生保バッシングが蔓延しているという印象を受けました。
片山:静岡の私の事務所には、先々週だけで5千件ぐらい意見が寄せられましたけどね、みんな冷静なものでしたよ。多くの人が怒っているのは不正または不適切な生保受給者に対してだけでなくて、勤労意欲をなくすような運用をしている国、地方に対してですよ。まじめに働いて社会保険料を払い、社会的責任を果たしている人間が正当に扱われるのが、私たちの信じてきた日本だろう。それが、河本さんだけじゃなく、怠けてずるいことしている人間が得する仕組みになっているなんて許せない、という憤りですよ。左系のメディアはそこが分かっていない。
安田:片山さんがおっしゃることは分かる。受給者のなかには怠け者もいるでしょうし、不正をしている人もいるでしょう。でも、実際は2010年度の不正受給額は約129億円と全体の0.38%に過ぎません。特殊な例を一般化して制度を厳格化してしまうと、受給すべき立場の人が受給できなくなったり、制度の枠からはみ出したりする人が、今よりもさらに増えてしまうと思うんです。
片山:不正受給のうち、摘発まで至るのは氷山の一角ですよ。河本さんのことを過度に擁護するような報道をテレビ局がした翌日、「うちもバラバラに住めば、あの一族のようにもらえるんだね」という問い合わせが福祉事務所に相次いだそうです。ケースワーカーの人員や調査権限をもっと強化すべきですよ。
※週刊朝日 2012年7月20日号