あまり鳴かないアクビちゃんだが、8月の3歳の誕生日には「アクビ!」と呼んで返事をした人は3割引というサービスを行った。獲得したお客さんもいたとのこと。ただし、「5歳までいったら割引額は折り返すと思います」と由美子ママ。確かに8割引、9割引となったらつらいですよね。
店は深夜まで営業しているが、あまり遅くなるとママとアクビちゃんが大変かも。とはいってもついつい……というのが猫好き酒飲みの習性なのかもしれない。
■三線の音色と猫の鳴き声 おいしい料理と気まぐれ猫の沖縄居酒屋
中野の飲み屋が軒を連ねる小路、昭和新道。「泡盛」と書かれた大きな赤いちょうちんを見つけたら、その奥にある、人がひとり通れるだけの階段をのぼる。そこが沖縄居酒屋「あしびなー」だ。
沖縄県那覇市南風原(はえばる)町出身の金城吉春さんが、上京してから約10年後に開いたのがこの店。今年で20年になる。
現在店にいるのは黒猫のクルー(オス1歳)。クルというのはウチナーグチ(沖縄方言)で黒のこと。ちなみに猫はマヤーという。黒猫はクルマヤーだ。
クルーは「あしびなー」の5代目猫だ。クルーは死んだ親猫のそばで鳴いていた生まれたての3匹のなかの1匹。店の仲間が見つけて報せてくれた。3匹を保護したがほかの2匹は残念ながら亡くなってしまった。その後、店のスタッフが注意に注意を重ねて育て上げ、人と接しても大丈夫なくらいに成長して、ようやくお店デビューをした。
カウンターやテーブルには乗らない。それは歴代の猫に共通なのだが、乗っているのを見ると金城吉春さんが一喝することがあるからかもしれない。ただ、イスには乗るし、わが物顔で寝る。そういうときは大抵客の方が気を使う。このあたりは猫と酒飲みの不思議な関係性といえる。
まだまだ子どもなので、なで方によっては爪を立てたり甘噛み攻撃をしてくることもある。カウンターの端でお客さんの、「いててて」なんて声が聞こえることもある。もちろん気持ちいいところをなでていると、ゴロゴロと喉を鳴らして目を細めたりするので、それを見てまた酔客もデレデレとしてしまうのだが。
慣れてくると膝に乗ってくることもあるし、カバンを置いているとそのなかが気になって頭を突っ込んでくることもある。「どっちかというと女の人のカバンが好きだね」と吉春さん談。
常連さんも多いが、一見さんも少なくはない。猫のいる店として知られているわけではないので、猫目当ての一見さんはいない。目当てはおいしい沖縄料理だ。それでも猫がいることを受け入れる人が多いのは、クルーの人徳ならぬ、猫徳 なのか……。
気まぐれ、甘え、わが物顔という猫の3拍子を備えたクルー、まだまだ接客は勉強中だ。
(文・写真/はるやまひろぶみ)
■店舗情報
家庭料理てまり
住所:東京都港区新橋2-9-11
営業時間:17:30~24:00(土曜18:00~)/日曜休
BAR猫
住所:東京都台東区上野2-8-7 上野広小路ビル3F
営業時間:19:00~未定(20:00~の日もあり)/日曜祝日休・月曜不定休
あしびなー
住所:東京都中野区5-53-9 内藤店舗2F
営業時間:12:00~15:00 17:00~24:00/無休(祭りなどで休む場合あり)