「母ももう70歳ですからね。本当ならパートなどさせたくないのですが。なんとも自分の甲斐性がないばかりに」

 こうしたシゲノブさんのような“中年フリーター”は40代を中心に増えており、年収200万円以下の収入で、両親を介護するケースも珍しくはないそうだ。

「企業に就職している人でも認知症を患った両親をしかるべく施設に入れるとなると家計への負担は重いです。そのため自宅での介護となります。そうすると今度は正規、非正規問わず働けなくなる。負のスパイラルに陥ることになります」(厚生労働省関係者)

 生活保護受給も考えたシゲノブさんだが、相談のため訪ねた区役所では、「持ち家があるのでダメ」とにべもない。

「もう少し認知症患者を介護してくれる施設の利用費を安価にしてもううとか、私の収入に見合った減免措置を取るとか。いくらでも方法はあると思うのですが」(シゲノブさん)

 30代後半、40代世代で、高齢の親を持つ者のなかには正規雇用の職を捨ててまで親の介護に当たると、介護施設の利用費がかさむ。

 今、厚生労働行政がすべきは、まず介護施設利用料について費用負担者の収入に応じた減免措置の実施、そして親を介護する中年フリーターの正規雇用の増大である。少子高齢化が進む今だからこそ取り組むべき問題だ。

(フリーランス・ライター 秋山謙一郎)

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