9つのマスにある生きものや海岸の様子を調べる「砂浜ビンゴ」 写真提供:NACS-J
9つのマスにある生きものや海岸の様子を調べる「砂浜ビンゴ」 写真提供:NACS-J
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海岸で見つけた貝などを拾い、図鑑で調べてみるのもおもしろい 写真提供:NACS-J
海岸で見つけた貝などを拾い、図鑑で調べてみるのもおもしろい 写真提供:NACS-J
小さい子どもも夢中になって生きものを調べるのがこのビンゴのよいところ 写真提供:NACS-J
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小さい子どもも夢中になって生きものを調べるのがこのビンゴのよいところ 写真提供:NACS-J

 海を近くに感じる季節、夏がやってきた! 子供たちも夏休み突入。「どっか連れて行ってよ!」と親に迫ってくる楽しいけれど恐怖(?)の季節でもある。

 そして子供、夏休みとくれば毎年苦労するアレを忘れてはならない。そう、最後まで置き去りになりがちな「自由研究」である。子供がこの宿題を後回しにして、8月後半の数日に親ともども苦労することはよくある話である。しかし、今年は子供の「どっか連れていって!」と、自由研究の2つの課題を一度に解決できるオススメの話題があるのでご紹介しよう。

 夏とくれば家族で海水浴を楽しむ予定のご家庭も多いだろう。その海について改めて考え、調べ、知ることができる簡単な調査がある。

 その前に少し解説。日本は四方を海に囲まれているわけだが、海岸線はどのくらいの長さがあるかご存じだろうか? 答えは約3万3000キロ。これは世界第6位という長さである。地球1周が約4万6000キロだから、その7割もあるわけで、かなりの長さだと分かるはずだ。しかし、この3万3000キロのうち、約半分は何らかの手が加えられた人工および半人工海岸で、自然のままの海岸は5割程度しかないのが日本の現状だ。さらに、その5割のうち、自然保護的な観点で守られているのはどのくらいだか想像できるだろうか。

 ここで、「海」ではなく「陸」を例に取れば、日本は国土の7割(約2500万ヘクタール)が森林である。にもかかわらず、国立公園や国有林の保護林などの、なんらかの保護地域に指定されているのは国土面積のたったの19.33%にすぎない。「でも海は広いし、人が暮らしていないからしがらみもないし、陸よりも保護対象になっているのでは?」と思う方もいるかもしれない。逆である。

「四方を海に囲まれた海洋国なのに、海域公園や漁業法などに関連して保護の網がかけられているのは日本の海域のわずか8.3%なのです。さらに、漁業資源だけではなく、多様な生物の保護という観点から厳正に守られているのはわずか0.016%です」と、驚きの結果を話してくれたのは(公財)日本自然保護協会自然保護部の志村智子さんだ。

 漁業をはじめ、日本人は海からさまざまな恩恵をもらっている。にもかかわらず国として、海や海岸域を保護するどころか、その前段階の調査すらほとんど行われていないのだという。日本の生物多様性国家戦略には、「海洋生物の生息・生育状況を含め、保全施策の基盤となる情報は不足しています」とはっきり書かれているほどだ。

「そこで、私たち一般人が海岸に行き、共通の生きものを調べてデータベースにすることで、日本各地の海岸の健康度(自然度)を調べようというのが『自然しらべ“砂浜ビンゴ”』です」(志村さん)。

 自然しらべとはNACS-Jが1995年より開催している「みんなで見ればみえてくる」を合言葉に、全国の人々と実施する日本の自然の健康診断。国が調査をしないならば、一般市民がいわば人海戦術で自然を調査してしまおうという試みだ。毎年、調べるテーマが異なり、2015年夏は砂浜。

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