「第三の人生 一発勝負してみよう」今やベストセラー作家の内田重久さん・81歳(東京都狛江市)
「第三の人生 一発勝負してみよう」
今やベストセラー作家の内田重久さん・81歳(東京都狛江市)
小学生のときに疎開先で見つけてから所蔵している『通俗三國志』
小学生のときに疎開先で見つけてから所蔵している『通俗三國志』
<私の相棒>内田さんが15年前に購入し、今も愛用しているワープロ。以前、団地の管理組合の会議の議事録をとる役についたとき、内田さんが作成した議事録は簡潔で要点を押さえていると好評だったという
<私の相棒>
内田さんが15年前に購入し、今も愛用しているワープロ。以前、団地の管理組合の会議の議事録をとる役についたとき、内田さんが作成した議事録は簡潔で要点を押さえていると好評だったという

 大好きな「三国志」のその後はどうなったのだろうか……。そんな疑問を独学で研究した東京都狛江市の元会社員、内田重久さん(81)は、75歳のときに「一発勝負してみよう」と歴史小説『それからの三国志』(文芸社)を自費出版した。単行本と上下2巻の文庫あわせて累計17万部の大ヒットとなった。

 内田さんは60歳で会社を定年退職し、その後、75歳まで簡易裁判所で裁判官の補助などをする司法委員を務めていた。

「『第二の人生』も区切りがついて、ひまになっちゃった。せっかくだから昔、趣味で書いていたものを出版してみようと思ったんです」(内田さん)

 小学生のとき、江戸時代に書かれた『通俗三國志』に出合い、その世界に魅了された。吉川英治の三国志を読んだとき、蜀の軍師・諸葛孔明の死後が詳細に描かれていないことに気づき、「その後の時代を書いてみたい」という気持ちを抱き続けた。40代のころ、趣味で執筆を開始。関連する史料は古本屋で買い集め、孔明の死後の約100年を書き上げた。原稿用紙約700枚に及び、時代背景は、東洋史学者の植村清二さん(故人)に2年にわたり教えを受けた。

 そうして書き上げた原稿は、『三国末史物語』として自費製本したものの、親戚、友人らに配っただけだった。それを改題し、加筆修正をしたのが『それからの三国志』だ。自ら出版社に持ち込み、初版800部からスタートした。

「出版社の言うことに乗っかっただけ。でも、勝負したかいがあったね。通っているリハビリ施設にも置いてくれ、まあまあいい扱いを受けていますよ」(同)

 今はもう小説の執筆はしていないが、毎年凝った年賀状を書くなど、執筆は楽しいという。

「読ませる文章を書くことが好きなんです。創作活動がなによりの頭の体操ですね」(同)

※週刊朝日MOOK「人生の再設計ガイド 70歳からのお金と暮らし」より抜粋