※イメージ写真
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 昨今の、健康意識の高まりからここ数年盛り上がりを見せているランニングブーム。笹川スポーツ財団が2012年に発表した『スポーツライフに関する調査2012』によると、日本のジョギング・ランニング人口は1000万人を突破。1998年の調査開始以来、初の“大台”突破で、その勢いは2015年の今もまだ続いている。

 ランニングと言えば、運動前のストレッチは常識。筋肉を温め、関節を伸ばし、身体を運動に適した状態に持っていくための大事なプロセスであり、怪我を予防するために必要なことだとされている。プロや市民ランナーに共通した常識であろう。

 しかし、その常識に異を唱える専門家がいる。

 04年度の「24時間走アジア選手権」に日本代表として出場し、06年度の「24時間走世界選手権国内選考会」において優勝した経験を持つ岩本能史(いわもと・のぶみ)氏だ。

 いままでに独自のメソッドで陸上未経験の市民ランナーたちのタイムを劇的に上げてきた岩本氏は、自著『型破り マラソン攻略法』の中で、運動前のストレッチは不要だと断言。その理由について彼は、骨と筋肉を「弓と弦」の関係に例えた上で、こう語っている。

「ストレッチで柔らかく長くなった筋肉は、弦が伸びて緩んでいるような状態。緩んだ弦で矢を力強く放つことが難しいように、運動時に十分なパワーが出にくくなります。一方の適度に硬い筋肉は、弦がピンと張って緊張感を保っている状態。ピンと張った弦から鋭い軌道の矢が放たれるように、運動時に必要なパワーが出やすくなります。つまりランニングに限らず、運動には筋肉が適度に硬い方が有利なのです」(同書より)

 また、多くのマラソン選手は精力的に腹筋を鍛えているが、岩本氏によればその腹筋運動自体がほとんどのランナーにとっては「無駄」であり、それよりも「走る練習に時間を割いた方が効率的」なのだという。

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