焼売という言葉を聞いて知らない人はいないだろうが、果たして最近いつ食べただろうか。一般的には餃子と並び評されることの多い焼売だが、餃子がどの中華料理店でも定番メニュー、専門店も多く出店し、好みはあるにせよ何らかの形で食す機会があるだろう。一方、焼売は中華料理店でもメニューに載っていないことが多く、神奈川・横浜名物の崎陽軒の奮闘は目立つが、その存在感は餃子に明らかに水を空けられていると言える。
ただ、少ないながらも焼売を看板に掲げる店は確実に存在し、そのおいしさや個性から、行列をなす人気店も決して少なくはない。おそらく大半の人は「焼売=崎陽軒」という認識だろうが、それ以外の個性的な人気店を知れば、間違いなく焼売は魅力ある食の選択肢となるはずである。
ということで、日本初(!?)の“焼売ジャーナリスト”として、より多くの方にもっと焼売をおいしく、楽しんでもらうため、知っておくべき3つの焼売をご紹介しよう。
●本当の元祖? 博雅「特製肉シウマイ」
まずは元祖焼売と言われる、横浜発の伝統の一品から。元祖であり横浜と言えば「崎陽軒」では?と思われるかもしれないが、実は同じく横浜・伊勢佐木町にあった「博雅亭」が日本で初めて焼売を製造販売したとされている(博雅亭は1899年に開始、崎陽軒は1928年)。ただその後の崎陽軒の躍進とは対照的に、「博雅亭」は1980年に閉店、松坂屋の子会社が商標を受け継ぎ製造販売するも、2007年の大丸との経営統合を機に子会社が解散し、製造販売は終了となった。
ただ、「博雅亭」の姉妹店として発足した「博雅茶郷」の流れを汲む製造会社「博雅」では、現在オンラインで販売を受け付けており、定番の「特製肉シウマイ」のほか、「謹製海鮮シウマイ」や「海老シウマイ」など多様な焼売を販売している。特に、「特製肉シウマイ」は崎陽軒よりも大きめで、豚肉がみっちりとつまり、1個でも食べ応え十分だ。ぜひ崎陽軒と食べ比べてみてほしい。
●女性のげんこつ大の大きさ! 魚樽「ジャンボシューマイ」
焼売好きならお気づきだろうが、世には「ジャンボ焼売」と銘打った、大きさを前面に押し出した商品が数多くある。その大半は直径5センチほどの大きさだが、東京・湯島にある「魚鮮炉端 魚樽」のジャンボ焼売は、直径8センチ前後で、女性のげんこつ大ほどの大きさだ。
通常は4等分にして提供されるそうだが、それでも一般的な焼売よりも巨大だ。その食感は焼売と言うよりもほぼハンバーグなのだ。しかし、その味はしつこくないので、ひとりでもぺろりと食べられてしまう。個人的にはビールとともに味わうのがおすすめだ。
ちなみに最大のジャンボ焼売は、崎陽軒のブライダルで披露される「ジャンボシウマイカット」の焼売。ただこれはカット後に小さい焼売が出てくるので、1個で食べられる焼売としては、おそらく魚樽のものが最大サイズと言えるだろう。
●桐生名物の具なし焼売!?
焼売の具といえば、豚肉がメインだが、エビやイカなどの海鮮系も多く、なかにはふぐや鯨など、個性派もある。
ただ、調べてみると具がない皮だけの焼売があった。群馬県桐生市にある「コロリンシュウマイ」は、ジャガイモのでんぷんが主原料だ。特別な具は入っておらず、皮のみの旨味と食感を味わう、どちらかといえば「駄菓子」的な存在として地元に愛されているとのこと。戦後焼売の代用品として商品化され、今に至っているとか。コロリンという名前は親しみを込めてつけられたそうだ。
他にもまだまだご紹介したい焼売は存在する。焼売の世界は実に奥深いのである。
(焼売ジャーナリスト・シュウマイ潤)