大宮駅で出発前の北陸新幹線。左側は盛岡行き「やまびこ」
大宮駅で出発前の北陸新幹線。左側は盛岡行き「やまびこ」
この記事の写真をすべて見る
記念乗車会で配られたお弁当。グランクラスで出されるメニューの一部も入っていた
記念乗車会で配られたお弁当。グランクラスで出されるメニューの一部も入っていた
広いトイレ。便座のふたは自動で開閉する
広いトイレ。便座のふたは自動で開閉する
座席ハンドルには点字表示
座席ハンドルには点字表示
金沢駅。新幹線口側を出たところは巨大空間になっている
金沢駅。新幹線口側を出たところは巨大空間になっている

 東京-金沢間を最速2時間28分で結ぶ北陸新幹線。3月14日の開業を前に2月6日、マスコミ向け試乗会が大宮-金沢間で開かれた。新設区間や新型車両の乗り心地はどうなのか。新しいもの好きの週刊朝日編集長が、日帰り試乗会に参加した。

 集合はJR大宮駅。午前10時半、出発の約40分前に行くと、すでに車体がホームに横付けされていた。これが噂の「アイボリーホワイトに青色と銅色をあしらった」という車両か。意外に地味かも?

 乗車し、入り口付近にある案内板で車内施設をチェック。招待席は3号車。11号車がグリーン車、12号車が話題のグランクラスだ。ただ、今日は両方とも立ち入れないという。残念。

 「車内は全席禁煙」となっている。嫌煙家には嬉しい。喫煙室のある新幹線は、どうしても副流煙が禁煙席にまで漂ってきてしまい、つらかったのだ。表示を見る限り喫煙室もないようだ。金沢まで2時間半だから、愛煙家の方々は我慢してね、というわけか。

 それでは車内見学。自動ドアを抜けて客車内に入ると、深い赤色の落ち着いた座席が並ぶ。座席の肩の部分、立っている時につかまったり、座席を回転させる時に握ったりする「ハンドル」の部分に、文字と点字が表示されている。「1ABC」。座席番号だった。へえ、バリアフリーを目指しているのか。親切だな。

 椅子に座ってみる。テーブルの裏側に注意書きがあり、枕の位置が上下できる、とある。もたれかかると、背の低い私にもちょうどいい低さ。これも嬉しい配慮だ。最近の飛行機などは枕部分が手前にせり出していて、背の低い人間にとっては首折れ状態になって苦しいのだ。座高に合わせて枕の位置を変えられるって、ぜひ航空会社にも真似てほしいもの。

 前の椅子との間隔が広いのか、膝前がゆったりな気がする。それに、窓が各座席ごとについている。飛行機で座席と窓の間隔が違うのに慣れていると、どの座席からもちゃんと窓外が見えるのは新鮮。窓下には窓側座席用のコンセント。前の座席の後ろには通路側座席用のコンセント。これでどこに座ってもコンセントに困らない。

 次は女子トイレの探索。入り口に、ここにも点字で案内が。中は……広い! ゆっくりできる。全身鏡が1枚と上半身用鏡が1枚。荷物かけフックが2個。使える! 荷物を持ってトイレに行って、荷物置き場がなくて往生することがあるので、これは助かる。ただし、手洗いはあってもペーパータオルもエアタオルもない。トイレを出た正面にある洗面台にはせっけん、エアタオルつき。ここにもフックは1個、使える。
 11時04分、いよいよ出発。滑るように、なめらかに走りだす。ん? 振動が少なくなっている? 新幹線といえば、下からモーター音のような振動音が伝わってきたものだけれど、この車両はびんびん響いてこない。それに、あれ? こんなに新幹線って静かだったかしら?

 文字も書ける。すらすら書ける。手紙だって書けそうなくらい、揺れがない。新幹線は横揺れが激しいので、本は読めてもメモは書けない、と思っていたけれど。横揺れだけでなく、縦の微妙な連続振動もすごく少ない。資料で確認すると、騒音の低減は車体の形状などで成功し、振動についてはグランクラスではもっと制御されているという。

 ここで、JR東日本副社長から車内アナウンスでご挨拶。北陸新幹線の概要説明によると、なんと東京-金沢間が最速2時間28分と! 近い、速い! それなら飛行機じゃなくて新幹線で金沢に行きたいかも。

 11時29分、高崎駅通過。この日は特別試乗会なので、途中停車は長野、富山のみ(降車はなし)。11時50分、石川県の観光協会の人たちが「ひゃくまんさん」のパンフレットを配って回る。続いて、試乗会特別記念弁当が配られる。

 食事のためにテーブルを下ろして、改めて前の座席との間が広い、と実感。というか、私にはテーブルの位置が遠い。きっと大柄な男性が窮屈じゃないような設計なのでしょう。

 さてお弁当。ふたを開けると〈おしながき〉が。赤魚白醬油焼、有頭海老煮、帆立貝ひもと数の子和え、海鮮麴和え、いわし胡麻衣揚、穂筍磯辺天ぷら、三色すり身団子串、玉子焼、汁なしのっぺ、豆腐田楽(下仁田ネギ入り味噌使用)、五目ご飯、いくら醬油漬け、菜の花お浸し、飾り人参、うぐいす豆甘煮、赤蕪漬。全16品。うち、汁なしのっぺ、豆腐田楽は、下り列車のグランクラスで提供する料理の一部という。豪華、そして結構美味。おつまみにもぴったりなので、これで酒を飲みたいなあ(グランクラスは飲み放題とのことなので、それも開業後のお楽しみ?)。

 弁当に箸をつけている間に長野駅に着いて発車。いよいよ新設区間だ。長野の手前ごろから雪景色になっていたが、長野を過ぎるとトンネルばかりになった。トンネルを抜けて、景色が見えた……と思ううちに、すぐまたトンネル。しかもトンネル内は携帯の電波が不通。なんと不便な! せっかく新幹線なのに、飛行機と差別化するなら、トンネル内も電波が通じるようにすれば良いのに。

 12時54分、富山駅到着。まだぴかぴかの駅。本当ならこの辺は立山連峰が見えるはずだが、あいにく曇っていて見えなかった。それにしても、今年は雪が少ないのだろうか。富山の手前からずっと平野部を走っているが、雪景色どころか、黒々と地面が見えていた。天気はぴーかん。

 13時、運転士のアナウンス。「ただいま列車は最高速度260キロで、新高岡駅を定刻通り通過しております」。新高岡駅を通過。揺れ具合も騒音も、最高速度とは感じさせない。すると、続いて「あと10分で金沢駅到着」のアナウンス。もう? 近い! びっくり! 速い! 大宮からまだ2時間なのに。

 1時14分、定刻に金沢駅着。快適快適! 駅はまだ工事中らしく、ホームの椅子にはビニールがかけられ、隣のホーム上の構造物は鉄骨がむき出しだ。開業まであと1カ月余。それまで突貫工事が続くのだろう。

 試乗会はかなりの強行スケジュールだった。金沢滞在時間はわずか53分。ホームに降り立ってから集合時間までは約40分。駅の外観を見て(金沢も雪は積もっていない)、お土産を買って、さあもう乗らなくちゃ! というわけで、今回はせっかくの金沢なのに、何も見られず食べられず、文字どおりとんぼ返り。

 乗り心地を体験する試乗会だから仕方ない。開業後にはぜひ、ちゃんと休みを取って、チケット買って(東京-金沢間で片道1万4120円)、改めてゆっくり金沢に遊びに来よう!と思った、金沢往復体験試乗会でした。
(週刊朝日編集長・長友佐波子)