東京地検は22日、東京電力福島第一原発の事故において、業務上過失致死傷の疑いで告訴・告発されていた東京電力の勝俣恒久元会長ら元幹部3名について、2度目の不起訴処分(嫌疑不十分)とすることを発表した。
1度目の不起訴処分の後、被災者らでつくる福島原発告訴団の審査申し立てを受けた東京第五検察審査会は「原発には高度の注意義務が課されているから、過去に起きたことがない危険であっても、科学的な根拠のある危険は予測すべき」(「危惧感説」という学説)として、東京電力の元幹部3名については、業務上過失致死傷罪による起訴を相当とすると議決していた。
古川元晴・元京都地検検事正は今回の不起訴処分について次のように語った。
「現に、危惧感説によって罪に問われた森永ドライミルク中毒事件などの事例もあり、最高裁判例もこれを支持したものはあっても否定したものはないのです。東京地検の不起訴処分は二度とも、過去に起きたことがあって具体的に危険が予測できないと罪に問えないという考え方(「具体的予見可能性説」という学説)によったものです。
原発は、一度事故を起こすと被害は極めて甚大ですから、事業者には高度の注意義務が課されていたことは、一般の常識として誰にでも明らかなことでしょう。今回の不起訴処分は、一般の常識に反しますし、検察の正義も失われてしまうでしょう。 原発は「治外法権」ではないのですから厳正公平に「法」によって裁かれるべきです。社会の安全を守るために、検察審査会が危惧感説によって、再度、適切な議決をすることが期待されます。」
また、船山泰範・日本大学法学部教授によると、東京地検が、二度目の不起訴処分をした論拠になっているのは、「過失犯において結果を具体的に予見できなければ、回避措置をとる必要がない」という見解によるという。これに対して「危惧感があれば回避措置をとるべき」とする見解に立てば、おそらく結論は違ったものになったはずだ。