財務省主税局と国税庁で一貫して税制改革に携わり、「税と社会保障の一体改革」と「国民総背番号制」を唱え、今の消費増税案の礎を築き上げ、国税庁長官まで上りつめた大武健一郎氏(65)に脱税疑惑が持ち上がった。大武氏の妻・満里子さん(61)が、12冊にも及ぶ夫の現職時代の"黒革の手帳"(1986縲鰀96年の間)を持参し、週刊朝日に告発したのだ。

 中にはビッシリと小さい文字で、小泉純一郎、安倍晋三両元首相ら自民党議員、菅直人前首相、仙谷由人政調会長代行、大蔵省出身の藤井裕久元財務大臣、松本龍元復興相ら民主党議員との面談などのスケジュールや、毎日の感想などが克明に記されていた。

 そして、夫が国税庁長官に就任した2004年までの銀行預金の通帳のコピー、確定申告書控えなどの物証を添え、満里子さんはこう訴えた。

「手帳にあった現金メモの記述は、家に残されていた確定申告音の控え、納税通知書、通帳記載額と照らし合わせても、正確でした。3年間だけで1千万円近くを過少申告し、"脱税"していた疑いが濃厚です」

 税制2課長時代の92年の手帳には講演料、勉強会謝礼など給与外所得(雑所得)と思われる記述があった。合計すると、457万円分になるが、その年の確定申告額は約188万円しかなかった。同様に、93年も360万円分、94年も350万円分が確定申告されていなかった。

 さらに、確定申告されなかった手帳に記された現金メモには興味深い記述があった。

<92年3月14日藤井ひろひさ:5万円><93年10月27日安倍晋三:5万円><94年7月5日松本龍:10万円)など政治家からのものだ。

「故・渡辺美智雄元外務大臣からは92縲鰀94年に計30万円を受け取ったようなメモがありました。夫は家で元外相を"渡辺みっちゃん"と呼び、『今日、ほめられたよ』などとよく自慢していました。政治家の方々からもお小遣いのような現金を頂いていたんだなと驚きました」

 政治家たちは本誌の取材に対し、「20年ほど前のことであり、資料もなく、記憶にもありません」(安倍事務所)、「全く知らない話」(当時は渡辺美智雄氏の秘書だった渡辺喜美議員事務所)などと答えたが、松本氏は事務所を通じ、

「大武氏へ10万円を現金で支払ったのは事実です。当時のスケジュール帳にも同様の記載がありました。松本本人も渡した記憶はあると話していましたが、名目はハッキリ覚えていません。恐らく、勉強会のお車代だと思われます......」

 とコメントした。

※週刊朝日 2012年7月13日号