寒く、乾燥する季節を迎えて、今年もそろそろインフルエンザ対策をしなければ──と思っている人も多いだろう。だが、それは甘い。海外に渡航する機会が増え、海外から日本に訪れる旅行者が多くなるなか、季節を限定した予防だけでは十分とは言えなくなってきているのだ。
海外渡航前の健康相談や帰国後の診療にあたる国立国際医療研究センター国際感染症センタートラベルクリニック医長の金川修造氏が、NPO法人バイオメディカルサイエンス研究会が開催した「感染症対策啓発セミナー2014」でインフルエンザ対策のポイントを講演した。
日本でのインフルエンザ流行時期は11月末から2月頃にかけてというのが通例だが、南半球のニュージーランドでは7月~8月、香港では冬と夏の2回、流行時期がある。「海外から帰国した方が全身の倦怠感や発熱症状を訴えた場合、真夏でも、渡航先によってはインフルエンザを疑う必要があります。帰国後の受診者疾患の中で、発熱疾患者の最も多くを占めているのがインフルエンザなのです」(金川氏)。患者の立場ならば、受診時には医師から聞かれなくても、いつからいつまで、どの国や地域に行ったのか、渡航歴を伝えることも大切だという。
インフルエンザの脅威からどのように身を守ればよいのだろうか。「やはりワクチンです。インフルエンザのワクチンは毎年接種が必要で、接種してもかかるケースがありますが、他に病気がある方の重症化を防いだり、流行の規模を小さくする働きがあります」(金川氏)
個人レベルでは、手洗いや、うがい、マスクが感染経路を遮断する対策として有効だという。「インフルエンザは症状が現れる前日くらいから他の人にうつす可能性があります。予防のポイントはかからない、うつさない、早期に対応する、の三原則です。例えば、ポピドンヨード液入りのうがい薬は、口腔内を除菌するとともに、はき出した液内のウイルスを不活性化する作用があります」(金川氏)。他者への配慮としてもワクチンやうがい、外出の自粛などを心がけるとよいという。
同セミナーでは、国立感染症研究所 感染症疫学センターの大石和徳センター長が「変貌する感染症」について講演した。エボラ出血熱、デング熱の発生について経過を報告。デング熱については「今後も国内の国際的な観光地などで、夏を中心に流行が考えられる」(大石氏)とした。
また、東京都葛飾区保健所長の中西好子氏は「生活弱者への感染症対策」として、保育園、幼稚園、社会福祉施設などでの感染症の発生事例を報告。発生時の対応や予防対策における、地域の保健所の役割を解説した。感染しないためには病原体を殺す(消毒)、手洗いやマスク、うがいで侵入防止、健康増進や予防接種で抵抗力をつける、定期検診・早期治療・咳エチケットで周りに広げないことが大切と話した。