東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系のホームページトップ画面
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 少子化時代の今、優秀な学生の確保は企業を悩ませる大問題。実は大学院も似たような悩みを抱えており、入学希望者を増やすためのさまざまな施策を打ち出している。

 高度な基礎研究を主とする、東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系もそのひとつだ。理系の基礎研究を志望する学生が減少するなか、同科は5月15日から、「THE SCIENCE THINKER」と題したプロジェクトを開始。多様化する研究テーマをネットを通じてわかりやすく伝えることで、他の大学院と差別化を図り、入学希望者増加をねらっている。

 今回の試みために立ち上げた特設サイトのページでは、研究者のシンボルである“考える人”を浮かべ、周囲に基礎研究に関連した約500ものキーワーを並べている。それらをクリックするとさらに、ひとつの研究テーマに対応した10のキーワードが星座のように浮かび上がり、多様な専門領域を持つ研究室の概要が直感的に理解できるという仕組みとなっている。

 なぜ今回のプロジェクトを立ち上げたのか。企画の中心になった、相関科学系研究室の大川祐司准教授はこう語る。
「物理学から科学哲学、生物学まで、非常に多様な研究を総合的に扱っているからこそ、『総合文化研究科』という名前になっているのですが、学生にとってはパッと見た印象で、そもそも理系なのか文系なのかもわかりづらい。そのため、優秀な教員がいて、最先端の研究を行なっているにも関わらず、東大内ですらマイナーな印象を持たれてしまっているんです。」

 自身も東大大学院出身者だという大川准教授は、かねてから「大学院と研究者を志望する学生のミスマッチ」を痛感していたという。
「例えば、超電導について研究したいと思っている学生にとって、物理学を専門に扱う大学院に進むのが良いのか、工学的な研究をしているところが良いのか、なかなか判断が難しいところがあります。だからこそ、大学院の側から、『うちではこんなことを研究しているんですよ』と熱心にアピールすることで、学生が研究室を選ぶ際の参考になればと思っています。」(大川准教授)

 5月14日にはキャンパス内でオープニングイベントも実施。2.4メートルの“考える人”をモチーフにしたオブジェを設置し、プロジェクションマッピングで基礎科学分野に関連したキーワードやビジュアルを投影した。

 入試希望者に向けたこうしたPR活動は、東大内でも珍しい。今や最先端の研究を行う大学院にとっても、積極的な情報発信が欠かせないものになってきているのだ。

【関連リンク】
THE SCIENCE THINKER
http://the-science-thinker.jp/