特別手配犯の菊地直子容疑者、高橋克也容疑者の逮捕により、節目を迎えたオウム真理教事件。かつて、1989年8月の「宗教法人」認証を巡って、教団による政治家への働きかけがあったと、まことしやかに語られた。さらに、教団の覚醒剤密輸疑惑に絡み、教団と北朝鮮のパイプも指摘され、その二つの話が交わった点に、ある大物政治家が浮上した。
それは、中曽根・竹下両内閣などを支え、政界のドンと呼ばれた金丸信・自民党元副総裁である。オウム真理教は地下鉄サリン事件直後、95年3月に教団施設の強制捜査を受けた。そこで、捜査当局は静岡県富士宮市の教団総本部の金庫から、現金約7億円と金の延べ棒約10キロ(約1千万円相当)を発見した。その「金の延べ棒」がカギとなっている。
「通常、金は製造番号などが刻印されている。この延べ棒は無刻印で北朝鮮産だった。ところが、脱税事件で金丸氏の事務所から見つかった延べ棒も無刻印だったことから、金丸さんとオウムを結びつける話が浮上したのです」
と言うのは、教団をよく知るジャーナリストだ。
金丸氏は90年に自民・社会両党代表団の団長として訪朝し、金日成主席と会談して国交正常化交渉開始への端緒となった。
「そのときに金丸氏は金主席から金の延べ棒を受け取り、その一部がオウム側に流れたとされた」(前出のジャーナリスト)
さらに、元教団幹部の井上嘉浩死刑囚が当時つけていたとされる、捜査当局に押収された「井上ノート」には、金丸氏についてこんな記述があるという。
〈政界の根回し役と北朝鮮のパイプ役として起用〉
金丸氏は教団の思惑どおりに"起用"されていたのだろうか。同氏は96年3月にこの世を去った。真偽は闇に消えたままだ。
※週刊朝日 2012年6月29日号