コロナウイルスの影響による内定取り消し事例が相次いでいる(写真はイメージ)
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 新型コロナウイルスの感染拡大がもたらした経済悪化は、企業の業績や採用活動にも影響を及ぼし始めている。感染防止と経済活動のバランスを取る道はあるのか。AERA2020年3月23日号で掲載された記事を紹介する。

【画像】他にもある!コロナウイルスに便乗した悪意あるメールに注意

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 倒産や失業も悪夢から現実へと歩調を速めている。

 SNS上では新型コロナウイルスの影響で内定取り消しや内定延期の連絡を受けたという声も上がり、政府は13日、経済8団体に今春就職予定の学生への内定取り消しを回避することや、来春就職を目指す大学生にも十分な配慮をして採用活動を行うことを要請した。

「新型コロナウイルスによる業績不振のため、現時点で採用が決まっている人は全て白紙に戻すことが役員会で決まりました」

 大阪市内の総合食品商社に転職が内定していた福岡県の男性(32)は3月上旬、内定先の支店長からそんな連絡を受けた。出勤開始まであと5日というタイミングでの、突然の内定取り消しだった。

「年明けから転職活動を始め、1月末に就職支援情報サイト経由で内定通知がありました。メールで支店長と勤務開始日なども決めたのですが、2月末から返信がこなくなった。何度か連絡して、ようやく電話がきたと思ったら、突然取り消しと言われてしまったんです」

 ただ、アエラがこの企業に事実関係を確認し、本社の人事担当者が社内を調査したところ、「新型コロナウイルスの影響による内定取り消し」は支店長のウソだった、という。

「内定を確定する前に、支店長が採用と伝えてしまった。その後の稟議で否決され、言いづらかったのか、新型コロナウイルスの影響だと口にしてしまったようです」(担当者)

 同社はこの支店長を厳重指導するとしているが、男性はすでに前の職場を退職しており、他に選考が進んでいた企業も辞退してしまった後だ。男性は言う。

「嘘をつかれたということですよね。今から仕事を探そうにもウイルス問題で求人は減っている。どうやって生きていけばいいかわからず、手詰まりです」

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