自分が用意してきた芝居に対して「違う芝居をやれ」と何度も言われて、繰り返しやるうちに自分の引き出しを出し尽くしてしまう。その後は自分の想像の外でお芝居をするしかなく、それが結果的によかったりするんです。想像の外だから、考えてもできない。だけど、稽古を重ねてそれを探し続けるのが役者の仕事であり、舞台の面白さだと教えてもらった気がします。
厳しい指導でしたが、自分が業界に入る前に想像していた「役者の世界」みたいな感じで楽しくもあった。生易しい世界じゃない、という……難しい方が楽しいんです。最新の武器じゃなくて、木の棒で攻略するみたいな感じが好きなんです。茅野さんと出会わなかったら、今もしょうもない芝居をしてたと思う。感謝しています。
ドラマや映画の仕事も増えた。映画「HiGH&LOW THE WORST」で演じた西川泰志は若手俳優がしのぎを削るヤンキー群像劇でもひときわギラついた輝きで観客の心を掴んだ。
佐藤:絶対爪痕を残してやる、と思ってやっていました。自分がここ数年で培ってきたお芝居をぶつけにぶつけた感覚です。アドリブも結構入れましたね。泰志は蹴りが得意なキャラ。俺も昔、空手をやってたときに蹴りが得意だったんで、のびのびと暴れました。不良役は得意な方だと思う。内面はTHE男。しかも「漢」のほうなので(笑)。
漢として野望はあるか。
佐藤:確固たる地位に立って、「2.5次元と言えば佐藤流司」と真っ先に名前が出る俳優になりたいですね。もちろん、2.5次元だけではなく、役者業全般やバンド活動でも。そして、これからどんどん出てくる新しい役者を見守ってあげられる存在になりたい。まさに野望です。
(ライター・大道絵里子)
※AERA 2020年3月23日号