前出の谷出さんは、学生内の格差もより広がるだろうと懸念する。

「企業側も学生の情報を得る機会が少ないため、インターンシップに参加してきた学生に選考の機会を与えがちになるなど、動いている学生がより有利になります。また、オンライン化で地方の学生にも時間や距離、お金の壁がなくなるメリットもあり、ますます競争が激化するでしょう」(谷出さん)

 日本銀行の黒田東彦総裁は新型コロナウイルスの経済影響について、感染が終息すれば経済も回復すると予想したが、一方で「リーマンとは違うショックが起きている」と長期化にも警戒感を示す。世界経済が大混乱し、経済の専門家であっても先行きは全く見通せないのが現状だ。

 国内消費の落ち込みは就活にも影響を与え、今年4月に入社予定の学生の内定取り消し事例が発生。学生の間にも不安感が漂う。

 だが、前出の栗田さんは、「就職氷河期のように極端に新卒採用を減らすことにはならないのではないか」とみる。

「経済状況によっては、予定より採用数を絞る企業が出る可能性もあります。ただ、ここ数年人手不足が続いていることや、各企業が新卒採用を行う理由として、『人員構成の適正化』も意識していることから、各企業が極端に採用を絞ることはないのではないか」(栗田さん)

 特定の世代がごっそり抜けてしまえば、いずれ中途採用で雇用しなければいけなくなる。過去に、極端に特定の世代だけ就活が厳しかったことで「ロスジェネ」を生んでしまったことや、企業内のいびつな年齢構成を生んでしまったことの反省も踏まえ、各企業は今回対応を考えるだろう。

 栗田さんは言う。

「就活生たちはまずはウェブを使った情報収集など、できることから行動してほしい。もし十分納得のいく結果でなくても、働き方が多様化した現在は転職やキャリアチェンジも盛ん。新卒は『ゴールデンチケット』というイメージがあるが、チャンスは一度きりではないので焦らないでほしい」

(編集部・福井しほ、深澤友紀)

AERA 2020年3月30日号より抜粋

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