かみじょう・ゆりな/1989年生まれ。介護福祉士・モデル。白梅学園大学非常勤講師。東京大学政策ビジョン研究センター研究協力者(撮影/写真部・小黒冴夏)
かみじょう・ゆりな/1989年生まれ。介護福祉士・モデル。白梅学園大学非常勤講師。東京大学政策ビジョン研究センター研究協力者(撮影/写真部・小黒冴夏)
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(撮影/写真部・小黒冴夏)
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 長時間労働、低賃金、利用者への虐待——介護職の「暗い側面」を報道するニュースは事あるごとに話題になる。介護福祉士として10年、今も週3回は現場で働きながらモデル活動をおこなう上条百里奈さんは、東京大学で介護の労働環境についての研究もしている。

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 研究のきっかけは、現場の声が届いていない現状を目の当たりにしたことだという。介護現場をどう変えていけばいいか聞いた。

*  *  *

——「介護は人手不足だ」とさかんに言われています。

 介護職を増やしさえすればいいわけではないと考えています。私は外食が好きでよくレストランやカフェに行くのですが、店内を見渡すとお客さんのほぼ100%がいわゆる健常者で、介護を必要とする高齢者や障害者にはほとんど出会うことがありません。これだけ高齢化と言われているにもかかわらず、高齢者となかなか会わない社会の在り方に違和感を感じてしょうがないのです。むしろ、ここが一番の問題なのではないかと思いました。

「人手不足」というだけで終わらないでほしいです。介護職が足りないから大変だね、という見方こそが、むしろ介護をひとごとのようにしているとも言えるかもしれません。だからまず無関心層を減らしたいのです。

——介護に関心を持ってもらえるものですか。

 中学校で250人の生徒を前に講演する機会がありました。最初、「介護の仕事に興味ある人?」と聞くと、手が挙がったのは3人だけでした。でも「介護の仕事とはどういう現場なのか、人生のクライマックスを生きる高齢者とはどんな人たちなのか」と90分話したあとにもう一度同じ質問をしたら、ほぼ全員が手を挙げてくれました。介護に触れるきっかけがないだけで、話せばちゃんと素敵な仕事だと伝わるのだと再確認できました。

 一方で、「もっと伝えなければならない」と情報発信の重要さを痛感した出来事があります。

 26歳のとき、国の事業に関わる方々の勉強会に参加しました。著名な先生方が「日本の介護のいま」というテーマでさまざまな発表をされていたのですが、決して目新しいものはなく、むしろ現場の人なら皆ずっと昔から知っているし、実践していることだったのです。それを最新の介護の姿として発表されていることに驚きました。

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介護現場を変えるには論文を書くしかない