人類と病原体との闘いは旧石器時代から続いている。人口増大とグローバル化は感染症の拡大を加速させた。長い闘いから人類はいったい何を学んできたのか?
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ペストが大流行し「黒死病」と恐れられた14世紀、人類はまだ微生物の存在を知らなかった。人類が病原体と闘う手段を発見していくのは17世紀以降だ。
『ロビンソン・クルーソー』の著者、デフォーは17世紀にペストが大流行したロンドンにとどまり、『ペストの記憶』を著した。レーウェンフックは顕微鏡を発明し、微生物を発見した。18世紀になってジェンナーが種痘を開発、19世紀に入るとスノウが感染地図から感染源を特定して流行を収束させ、パスツールがワクチンを開発……。人類は、やっと病原体との闘いの土俵に立った──はずだった。
だが、近年は、科学の発展を上回る速度で新型のウイルスが現れ、多くの命を奪っている。
首都大学東京の菅又昌実名誉教授(公衆衛生学)は言う。
「感染症との闘いで何より大切なのは、科学の英知を人類が共有し、正しく恐れる意識を高めて予防に努めることです」
(文/本誌・鈴木裕也・鮎川哲也)
※週刊朝日 2020年4月3日号