芸能人が、本物と偽物、あるいは高級品と日用品の違いを見分けるテレビ番組では、その人が目利きかどうかで「一流」「二流」……と格付けします。京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師は、普段目にする医療情報についても、目利きであることの重要性を訴えます。
* * *
本物と偽物、高級品と日用品の違いを見分け、その人が一流の芸能人かどうか判定するテレビ番組。私はこの番組が好きで、お正月になると毎年見ています。
例えば、100万円の高級ワインとコンビニワインを飲み比べて、高級ワインのほうを当てる。有名な画家が描いた絵画と、素人が描いた絵画を比べ、有名絵画を当てる。高級盆栽とお菓子で作った盆栽を見分ける。みなさんも一度はご覧になったことがあるのではないでしょうか?
私は学生時代いわゆるオタクで、ルノワールなどの印象派の絵画が好きだったことから、有名絵画であればなんとかわかります。しかし、何億円とする楽器で奏でた音と、練習用の楽器での音を聞き分けることはできません。高級な牛肉を当てることも、きっとできないでしょう。
ところで、このゲームには、二つのパターンがあることにお気づきでしょうか?
それは「高いものか安いもの」を目利きするか、「本物か偽物」を見極めるか、の二つです。どちらかが高級品でどちらかが日用品という選択と、片方は本物で片方は偽物といった選択をゲームにして楽しんでいます。
実はこれ、みなさんが普段目にする医療情報も同じ構造です。「本物の医療情報と偽物の医療情報」と「質のいい医療情報と質の悪い医療情報」が混じり一般の方に届いています。
例えば、経皮毒(けいひどく)という言葉をインターネットで目にすることがしばしばあります。
「化学合成物質や添加物が皮膚から吸収され、女性の場合は子宮にたまる」
これは偽物の医療情報です。子宮に化合物がたまることはありません。
一方、「〇〇を食べればがんにならない」などのマスコミによる医療情報のほとんどは、ウソというわけではなく、質の悪い医療情報に分類されます。専門家からすると「たしかにそういう報告もあるけれども、これが完璧なような表現はやめてほしいなぁ」という感想を持ちながら情報に触れています。