河井克行前法相(c)朝日新聞社
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河井案里参院議員(c)朝日新聞社
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「こんなことになるとはのう…」

【写真】現金を地方議員に手渡したとされる河井案里参院議員

 こううなだれるのは、広島県の地方議員、Aさん。広島地検の取り調べを受け、疲労困憊の表情だった。

 前法相の河井克行衆院議員と妻の河井案里参院議員の公職選挙法違反事件で3月24日、克行氏の政策秘書、高谷真介被告と案里氏の公設秘書、立道浩被告が広島地検に起訴された。

 広島地検は今後、克行氏と案里氏が広島の県議や市議などの地方議員に直接、現金を渡したとして、公職選挙法違反(買収)の容疑でも捜査に乗り出す方針だ。

 冒頭のA議員は、現金を夫妻からもらっていたという嫌疑で、広島地検に調べられていたのだ。捜査関係者がこう解説する。

「克行氏や案里氏の事務所などを捜索。また、2人の携帯電話も押収。そこから、広島の地方議員に、カネを配っていた痕跡がわかってきた。昨年5月、6月に克行氏が集中的に地方議員をまわった予定表などもあり、配った相手や金額など示唆するリストもあった。20人くらいの地方議員の名前が出ているようだ」

 つまり広島地検は「買収リスト」を発見、押収したというのだ。自民党の複数の地方議員の話を総合すると、昨年5月から7月にかけて、河井夫妻からこんな誘いがあったという。

「克行氏や案里氏から『ぜひ会いたい』『食事をしませんか』などと誘われるようになった。行ったところ案里氏が封筒を差し出して『これでよろしくお願いします』などと言われた」(広島の地方議員)

 別の地方議員もこう証言する。

「ちょうど、統一地方選が終わって1か月後くらいだ。『当選おめでとうございます』などと言って、克行氏がやってきた。いろいろ話していると、急に封筒を取り出して『これ、今後も』と手渡してきた」

 広島地検は3月25日頃から広島の地方議員を呼び出し、連日、事情聴取をしているという。冒頭のA議員はこう話す。

「『広島地検ですが、明日、来てくれますか』と突然、電話が入りました。何か悪いことをしたんじゃろかと聞くと『河井議員の選挙のことで』と。それなら行くしかないと、OKした。広島地検の前はマスコミがたくさんいるからと、別の場所で待ち合わせて広島地検の車で迎えに来てもらった」

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