新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供 (c)朝日新聞社
新型コロナウイルスの電子顕微鏡写真=国立感染症研究所提供 (c)朝日新聞社
主に国内で使われている薬 (週刊朝日2020年4月10日号より)
主に国内で使われている薬 (週刊朝日2020年4月10日号より)

 新型コロナウイルスの感染拡大による東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期について、専門家から疑問視する声が出ている。記者会見した日本医療研究開発機構(AMED)理事長の末松誠医師は、「終息の時期はわからない」としたうえで、私見を述べた。

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「スペイン風邪では終息かと思いきや、またピークが来て(終息まで)足かけ2年はかかった。歴史を振り返るとそういう例もあり、1年で終息するのは厳しい」

 ワクチンの開発も始まっているが、「短く見積もっても(できるまで)1年ちょっとかかる」(末松医師)。

 感染症に詳しいナビタスクリニック理事長の久住英二医師も、「終息は厳しい」と考える一人。

「SARS(重症急性呼吸器症候群)はウイルスがいなくなり、世界保健機関(WHO)が終息宣言を出しましたが、新型コロナウイルスはそういうタイプのウイルスではない。この感染症のゴールは、多くの人に免疫ができて、感染が広がらない状態、いわゆる集団免疫を獲得することです。それを目指すなら、1年では足りません」

 薬(後述)については効果が徐々に明らかになってきた。

 有望視された抗HIV薬のカレトラは臨床試験で効果が認められず、インフルエンザ治療薬のアビガンも日本ではあまり効果が得られていないという。

「アビガンについては、使い方が問題。日本では、重症の患者さんに主に使っているからです。抗ウイルス薬は抗菌薬と違い、ウイルスの増殖を防ぐ作用しかない。肺の中で増殖しきっている状態で投与しても効果は薄く、もっと早いタイミングで使うべきです」(久住医師)

 エボラ出血熱の治療薬として開発されたレムデシビルは「ウイルスが細胞内で増殖する作用を阻害する薬」(開発したギリアド・サイエンシズ社)で、試験管では有効性が確認されている。未承認薬だが国内でも試験的に重症の肺炎患者に使われ始めた。米国などで国際共同臨床試験が始まったほか、中国の臨床試験の結果が4月には公表される予定だ。

 国立国際医療研究センター国際感染症センターの大曲貴夫医師は言う。

「新しい治療薬は一日でも早くほしい。だが、有効性を評価する科学的な手続きを経る必要がある」

 1年後、今と同じ状況でないことを祈るしかない。

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