私は、50代の人のおそらく20%ほどは、この2段階の状態にあるのではないかと思います。定年に向けた環境変化を意識し、日々、なんとなく行き詰り感を覚えることで、心の底で、漠然とした不安感や息苦しさを覚える「感情労働」が多くなっているからです。職場では明るい顔で冗談が言えていても、あるとき「こんなことぐらいで」と感じるような出来事をきっかけに心が折れてしまう人がたくさんいます。

 また、50代の時期は、いわゆる「出世組」と「それ以外」に分かれる年代です。幹部会議に呼ばれず、部下たちと仕事をする。重要な意思決定には関わらずにアフターフォロー中心となる。1段階の疲労であれば、「それも、ありだな。さっさと会社を出て好きなことをやろう」と切り替えることができます。しかし、2段階になると、「うつ的性格」が顔を出し始め、周囲から「あの人、何しているの?」という目で見られているような気がする。どんどん自信を失っていく。「いっそ、もう辞めてしまったほうがいいんじゃないか」と本当に退職してしまう人もいます。

「まず、休みましょう」

 私は明らかにエネルギー切れの人には、いつもこう言います。定年は、居場所が変化し、新たな環境に身を置く“ゼロリセット”であり、その環境変化に対応するには想像以上に大きなエネルギーを消費します。「疲労のケア」ができていないと、定年後に3段階のうつにあっという間に突入しかねないのです。だからこそ、50代の今から「休めば回復する」という経験を積んで、疲労のケアのスキルを高めておくことが大事なのです。(取材・構成/柳本操)

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