年老いた時、性とどう向き合うか──。2月末に高齢者の性を描いた小説「春、死なん」を出した人気AV女優・紗倉まなさん(27)と、85歳となった今も多方面で精力的に活動するジャーナリスト・田原総一朗さんが、老人の性や恋愛などについて、たっぷりと語り合った。
【前編/田原総一朗×紗倉まな 高齢者の「恋愛」と「性」の複雑な事情】より続く
* * *
田原:この小説のテーマとしてもう一つ、家族との関わり合いがありますよね。
紗倉:はい。性に対する意識だけではなく、性別による役割やおじいちゃんらしさみたいなものを押し付けることがはたして正しいのかどうかということも描きたかったテーマです。
田原:この小説では富雄の長男の賢治も大きな役割を果たしていますね。2人で暮らしたいと思っていた富雄夫婦に、長男はそれでは不便だろうからと、半ば強引に2世帯住宅にしましょうと。
紗倉:息子の賢治は両親を思って2世帯住宅を提案するわけですけど、それが両親にとって絶対幸せであろうという決めつけがすごく含まれているんです。老人というくくりで見て、一緒に暮らしたほうが幸せだというステレオタイプです。でも、それが孤独感を生み出すことになるんです。
田原:結果として、2世帯住宅にストレスを感じて、喜美代の命を縮めたとも言えるね。
紗倉:実は、私が小学校に上がる前くらいのころに、数年間ですが、祖母と2世帯住宅で住んでいたことがあります。
田原: 経験上の話なんだ。
紗倉:2世帯住宅なのに行き来がなかったんです。1階が祖母の家で、2階が私たち家族の家。でも誰も下の部屋に行かないし、どんなふうに生きているのかも本当に知っているのかな、というか。その距離感があまりにも冷たく感じられて。そこに対して誰も疑問を持たず、祖母の話もせず、一緒に住む意味って何なんだろうなって小さい時から思っていて。
田原:小さい時から2世帯住宅には問題ありだと思っていたわけね。