「欧州と東アジアの致死率の開きは、人種的なゲノム(遺伝情報)の違いによるなどさまざまな説がありますが、現状ではよくわかっていません。ただ、理由はどうであれ、東アジアの致死率が低いのは事実であり、その現実を冷静に見極めないといけません」
大事なのは医療従事者と病院、そして最低限の社会の機能を守ること。上理事長は、そのために重要なのは「抗体検査」だと指摘する。
抗体とは、体内に侵入した異物を攻撃するために作られる分子で、免疫のもとになる。
「抗体ができた人は再発を防げたり、再発しても軽症で済んだりする可能性が高いとみられます。感染の有無を調べるPCR検査と抗体検査の両方をどんどん進め、感染者は一時隔離し、抗体保持者は社会の最前線で活動してもらうよう分担を図るべきです」(上理事長)
致死率が低い日本では、免疫を持つ人が一定数を超えれば、ウイルスが新たな宿主を見つけられなくなる「集団免疫」によって感染拡大を防止できる可能性が高い、という。
上理事長が慎重な見方を示すロックダウンだが、経済界からは賛成する声が上がる。
「緊急入院をして、早く回復させるほうが大事」
経済同友会の桜田謙悟代表幹事は3月31日の記者会見でロックダウンを緊急入院に例え、その必要性に言及した。では、もし実際に行われたら何が起きるのか。先例を見てみたい。
1月23日には新型ウイルスの発生源とされる中国湖北省武漢市で公共交通の遮断を含む都市の閉鎖が行われた。手法の是非について議論もあるが、いずれにせよこれが今回の新型ウイルスをめぐっては、初のロックダウンだろう。
それから2カ月半。感染拡大を防ぐため、世界各国で様々な形での規制が敷かれた。死者が増え続けたイタリアでは全土で移動制限がある。インドも全土で外出禁止令を出した。自らの感染も公表した英国のボリス・ジョンソン首相は、国民に3週間の外出禁止令を出し、違反者には罰金を科すという。(編集部・大平誠、渡辺豪、小田健司)
※AERA 2020年4月13日号より抜粋
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