そんな姉が、中学生になる頃から、家族とあまり話さなくなったという。学校から帰っても挨拶せずに自分の部屋へ入り、母親に反発してぶつかることも多くなった。宇賀は人知れず、苦しんでいた。小学校高学年の頃から上履きを隠されたり、校帽や体育着をとられたり、悲しい思いをすることが度々あったという。

「中学時代までがいちばんつらかった。私にも意地悪な心があって、嫌いな子や仲良くできないお友だちもいっぱいいたし、人を妬む自分も嫌だった。狭い世界が息苦しかったのだと思います」

 そんなとき図書館で見つけたのが、医師でエッセイストの海原純子が書いた『ポジティブ思考が女を変える』という本だ。<「嫌いな自分」を「好きな自分」に変える><ひとりを上手に楽しめる人は、皆とも上手に楽しめる>……。そんな言葉が早熟な少女の心にぐさりと刺さる。

 宇賀はさっそく「自分改革」を始めた。モデルにしたのは、少女漫画『天使なんかじゃない』の主人公の冴島翠(さえじまみどり)。明るく前向きな高校生だった。

「翠ちゃんみたいになれたら、学校も楽しくなるだろうなと思い、ちょっとずつ真似したんです」

 嫌なことがあった時はどうやって立ち直るか、好きな子がいて失恋したら……と、シミュレーションをし、何があってもポジティブに考えるようにした。すると高校生活は一転する。

 進学した地元の都立高校は共学で制服がなく、髪を染めるのも自由。友だちも面白い子ばかりだった。青春ドラマの世界に憧れ、応援団へ入部。学ランの先輩に朝から晩までみっちり鍛えられ、のどを潰すような練習に明け暮れた。さらにパワーアップしたのは大学時代だ。

 立教大学時代からの親友で、ジュエリーデザイナーの林聖子(33)は出会った頃の宇賀を鮮明に覚えている。ショッキングピンクのTシャツにデニムのパンツ、トレンチコートを着こなし、パステルカラーのゆるふわ女子が集まるキャンパスで、宇賀の独自の華やかさは人目を引いた。

「彼女は太陽みたいな人。光を放って、みんなの視線を集めるし、明るく照らして周りの人を幸せにしたいと思っている。すごく度胸もあって、人並みはずれてポジティブなんです」

 興味を持ったら即行動。仲間とエンターテインメントサークルを結成し、ワールドカップ観戦などのイベントを企画、一緒によく旅行もした。恋愛でつらい時期があっても、くよくよ悩むことはない。そんな宇賀がいつになく落ち込んだのは、就職活動で、あるテレビ局に落ちたときだった。(文/歌代幸子)
                                                                 
※記事の続きは「AERA 2020年4月20日号」でご覧いただけます。

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