また、羽生の『SEIMEI』などを手がけたシェイ=リーン・ボーンは、ビクター・クラーツとのペアで03年世界選手権を制した元アイスダンサーだ。エモーショナルな振付が特徴のボーンは、日本の選手にも多くのプログラムを提供している。
現役引退後、一度離れたスケートの世界に再び戻ってくる元選手もいる。小塚崇彦は16年に現役引退を表明した際、「滑るよりも、他にいろんな経験ができるんじゃないか」との考えからトヨタ自動車の社員として業務に専念することを決意。様々なスポーツに携わった後、17年から自らの技術をフィギュアスケートに還元する活動を始め、現在はアイスショーへの出演や後進の指導、スケートの用具開発など多方面で活躍している。
また、14年ソチ五輪でロシアの団体金メダル獲得に貢献、14年世界選手権では銀メダルを獲得しているユリア・リプニツカヤは、17年9月の引退表明時にはスケートから離れる意志を示していた。しかし18年、フィギュアスケーター養成機関「アカデミー・オブ・チャンピオンズ」を立ち上げ、ヨーロッパやメキシコ、日本でイベントを開催。19年7月には横浜で行われたアイスショー『氷艶2019』にも出演し、日本のファンに再び氷上での姿を見せてくれている。
フィギュアスケーター達のスケートへの思いは、現役引退後も様々なかたちをとりながら続いていく。(文・沢田聡子)
●沢田聡子/1972年、埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。シンクロナイズドスイミング、アイスホッケー、フィギュアスケート、ヨガ等を取材して雑誌やウェブに寄稿している。「SATOKO’s arena」